私たちの望むものは

 明けた稚内はあいかわらずの曇り空。俺はどうも北海道の青空に縁がない。
 昨夜距離が合わないと思ったジェベル、どうもフロントから音がする。

 これはひょっとして?

 前輪を浮かせて回してみれば、メーターのあたりから擦るような音が。そうか、メーターケーブルが切れそうなんだ・・・



 北海道には紛らわしい岬があって。
 納沙布岬は根室の先端、北海道(というか日本本土)の最東端にある。納沙布は「ノサップ」と読む。
 ここは「ノシャップ」岬。ほぼ最北。全然位置が違うわけだ。

 よくあるパターンで、「○○までは自由行動、現地集合ね」というのがある。
 ノサップとノシャップを間違えたら・・・それはとんでもないことになるわな。



 昨日まっすぐ来ていれば向こうからこちらへ走ってきていたはずだが、日本海側を南西へ舵を取る。



 利尻富士がうっすらと姿を見せた。
 利尻・礼文に用はあまり無い。俺は林道を走るために北海道へ来たのだから。





原生園の花たち



 利尻をバックに一枚。晴れていればね・・・



 何もないまっすぐな道。みんなここに憧れて来る。何もないのに。

 ♪私達の望むものは与えられるではなく 私達の望むものは奪い取ることなのだ♪ (詩:岡林信康)

 ここは与えられるものは何もないが、ここから何を得られるのか。価値は他人にはわからない。



 何もないのが売り。原野を売り言葉に人を呼び寄せる。
 それに呼ばれた我々がここにいるわけで。



 原生花園、といえども夏には大した花もなく、本当に原野の姿を見せるのみ。



 わずかな花も鮮やかなものではなく、寂しいこの地に似合ってしまうささやかな花たちだったり。



 大きく南下を始めよう。今日は一気に下るぞ。
 少し雨が降り出した。北部は雨が降りやすい。早めに晴れた地域まで行きたい。



 お昼前。音威子府の駅に着いた。ホームの木造機関車は今年も健在であった。



 列車の来ない時間帯なんだが、駅は盛況だ。みんな車やバイクなので・・・俺もだが。



 ここに来る理由はこれ。
 音威子府の駅蕎麦は数あるJR駅の立ち食い蕎麦でも有数の人気を誇る。

 黒い蕎麦に黒い汁。シンプルに掛け蕎麦で一杯。



 名寄まで降りてくれば高速道路がある。この先は特に用のない所なので少しワープする。
 旭川からは無料の高規格道路に続く。土地が豊富な北海道とは言うものの、これを作った費用償却はどうするのだろう。有料にして少しでも稼ぐ必要があるのではないのだろうか・・・有料では走る車が少なくて設備の運用費も出せないとか?



 上川までワープしたらそこはもう層雲峡。
 夏ではロープウエー上がってもしょうがないものなあ・・・



 大雪湖で別れて三国峠を登る。調子の良いジェベルの良く延びるエンジンがぐんぐん車体を加速させる。

 ・・・そんなとき。



 ふと気がついたら、走行中のメーターが0kmを指していた・・・
 大雪湖までは確実に動いていた。この峠を登り始めてから完全に切れたのだろう。

 そういえば燃費が30kmぐらいだった。通常なら35kmは越えるはずの車両だ。昨日の夕方は1割強の距離誤差を生んでいたが、今は2割増ぐらいの誤差と見ておいた方が無難か。
 このさきしばらくガソリンスタンドのない無人地帯を走る。101kmで止まったメーター、しかし今日はもう300kmも走ることはありえない時間だ。問題は無かろう。
 SJ45モデルであったことが幸いした。今現在を含めて8年ほど乗ってきた車両だけに、メーターを見なくともおおよその速度はわかる。めったなことはあるまい。



 2年ぶりの三国峠。今年はまだ日のある内にたどり着いた。



 この橋から見る高架橋がこの道の最大の見所。
 300mmレンズを駆使して走りすぎるバイクを撮ってみる。

 冒頭の2台のオフ車はちょっと離れたところに止まって記念撮影を始めた。接触して写真をあげようか・・・
 そこまで移動しているうちに彼らは出発してしまった・・・



 今日も林道へ行く。音更川本流林道も2年ぶり。モタード車で走れるレベルだからジェベルにとっては平地に等しい。
 最後の川渡りももちろん乗って渡っていく。

 ただ、オフロードバイクなら楽勝なんだが、ワンボックス自動車が渡っていくのはどうしたもんだ・・・
 その先のいささか荒れた箇所では大きく車体を揺すりながら、底を何度も打ちながら上がっていくぞ・・・



 岩間温泉はこの時期キャンプに来る人であまり好ましい条件ではない。
 本来の湯船は泊まり客が一番風呂に入るため今湯を抜いて掃除をしたという。その下にある石積みの浴槽・・・こんなの以前からあったか?・・・は入れるよ、ということで。川は見えないがこれもまた野湯らしくて良いもんだが。



 ここから本来は北見へ向けて置戸を越える予定だった。30km近い林道がある。
 しかしながらメーターの問題とか考えると、明日の走行距離を少し抑える方向に転換した方が無難な様だ。

 予約してあった北見の宿にキャンセルを入れ、帯広に確保する。
 明日の行程は完全に練り直しになるが・・・



 一応タウシュベツへも行っておく。今年は水が少なくて綺麗な円になっていないが。
 時間も遅いし天気もよくないので思ったようには水面に反射していないし。なかなか良い条件はそろわないものだ。
 完全に崩れ落ちる前に、良い状態を見ることは出来るのだろうか。



 名所だからレプリカ系のバイクがおっかなびっくりやってくる。そんな程度でも林道のひとつ。
 本来ここから糠平湖までつながっているが、先ほどオフロードバイクが引き返してきたので通り抜けられないということだろう。



 日が落ちて霧にむせびながら帯広の街へ。
 今日は祭り日、花火を横目で見ながら。

 明日は最後の日だ。

最後の林道へ




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