私たちの望むものは
北海道を走り始めて数年。帯広はそのたびに訪れる街になった。
昨年まで、WRCのラリージャパンが帯広中心に行われていたのは、この地に多くの林道があるからだ。今年からそれも札幌周辺に移るようだが・・・
今日は朝から雨が降っていた。
毎度のことだ。帰る日はいつも雨。
どうしたものか。雨の中走るのも鬱陶しいが・・・
雨はたいしたことない。やはり走ろう。
昨年も来たこの界隈、いささか自分の運転に合わないセローでパンケニコロベツを走った。
今年はもう一本のルート、ペンケニコロベツを選択する。
「パンケ」と「ペンケ」は対になる。北海道へ来たならばいろいろなところでこの2つの名称に出会うはずだ。
何のことはない、「パンケ」は「上」、「ペンケ」は「下」を意味する。今回は下の方を走ろうと言うわけだ。
パンケニコロベツの方が初心者向けと言われることがあるようだが、ペンケニコロベツの方が大半は走りやすい。ごく一部荒れたところもあるが、本州の林道から見れば全くもって楽なレベル。
ここでもジェベルはその能力を存分に発揮・・・しているんだろうな。メーターが動かないから正確に何キロで走っているとは言えんけども。
奥十勝峠へ出た。パンケニコロベツと合流する。昨年のセローと同じアングルにジェベルを停める。
この峠はどちらを向いても長い林道で、外界から遠く離れた場所ということになろう。
もちろん携帯電話も通じず、もし万が一トラブルを起こしたらどうしたらよいかと問われると・・・
今に始まったことではない。北海道の林道はどこも長くて外界から遮断された場所なのだから。
なに、最大でも30kmも歩けば・・・それぐらいの覚悟は必要な場所なんだろう。
だからこそ、信頼の置けないバイクでは入るべきではない。良く整備されていたバイクだから、また何かがあってもよくわかっているバイクだから、こういう道でも安心して走れるというものだ。
静かな峠には鳥の声と虫たちがいるのみ。しばらく休んでいても誰も来る様子はない。
シートカチ林道は渓流沿いになる。奥十勝の山深く、水の生まれる場所。渓流は速く冷たい。
ペンケニコロベツ〜シートカチと延々40kmあまり。ダートを終えてわずか100mも無いぐらいでまた林道がある。
曙橋から沼峠を越えるこの林道。沼=ヌプン、すなわちヌプントムラウシ温泉へのアプローチはこの林道になる。昨年は情報で通れないと見ていたが、実際は通れた様子で残念な思いをした。今年はここまでの天候も安定しており、北海道の林道で通行に支障のある災害は無いようだ。
ヌプントムラウシ林道も12km以上の距離がある。そしてこれが最後の林道になるだろう。
たどりついたヌプントムラウシ。やはりキャンパーでいっぱいだった。
昨日の岩間温泉とは山を隔てた反対側になる。どちらも同じ山の生んだ温泉なわけだ。
温泉は川の対岸にあるが、岩間温泉と違ってここは安心して渡れる・・・
ここの源泉は完全な熱湯で、ここから湯船に導管で湯を引き、水と混ぜて入浴する。
このお湯ならばコーヒーやカップラーメンも出来るらしいが。
近くに野湯もあるようだが、荷物が多いのでできあいの露天風呂へ。
子供の遊び場になってしまっているのはこの時期だから仕方ないか・・・
子供たちがいなくなるまで長湯した。今日はもうこれで十分だ。
今回の旅にこれより先の予定は無い。もう帰るだけになった。
もういいや、と満足する瞬間てあるだろう?
今まさにそれ。
北海道に惹かれて何度も足を運んでいるのは、広大な景色、そして旨い海の幸。それよりなにより素晴らしい温泉があって。
だけど、何にも増しての一番は、飽きる程に続く長い林道だということ。
来るたびに徐々に走りを求めたバイクにステップアップしてきた。おそらくその究極を見つけたことが林道をより楽しくした。
函岳56km、音更から糠平で32km、ペンケからシートカチで40km。そしてヌプントムラウシで24km。3日間で走った林道は152kmに上った。
私の望むものは・・・
私たちオフロードライダーの望むものは・・・
林道なんだよ。
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