夏の1枚

夏は暑いからバイクは自粛しよう。そう思い始めたのはここ数年のこと。いや、いつまでも若くないからね。体調管理には気を使っているわけさ。
しかし涼しいところなら別だよなあ・・・

夏休みの北海道なんてとても行けるもんじゃない。そこまでの足が確保しにくい。なんかイメージは埠頭にテント張ってキャンセル待ちして、混み混みの通路に寝袋敷いて・・・なんだがな。

だから今年もバイクな夏ではないつもりだったんだが。
何となく国内線ドットコムを見てみたら意外に簡単に飛行機がとれそう。じゃあ、とバイク屋に尋ねてみたらレンタルもわりと空いてる。

そうして夏休みの北海道が決まったのさ。





 昨日スリーセブンで降り立った北海道。帯広のバイクショップ「YSP帯広」が今回お世話になるレンタル扱いだ。



 ・・・本日、8月15日・・・

 おいおい、予約はどうなってんだぁっ!?

 数分後、マジェスティで店員さん登場。よかったよかった。



 今回レンタルするのは、YAMAHAのXT250X。モタードのモデルである。オフロード車両としたかったのだが、なにぶん突然決まった旅行なので贅沢は言えない。
 この車両はまだ新しく、走行距離は2273km。転倒跡もなく新車気分でツーリングができそうだ。

 旅程は3日間、通常に考えれば24時間x2日+延長時間数時間となるのだが、北海道のレンタルは1日あたり300km程度の距離制限がある。予定では900kmを超えるので、あえて3日契約とした。250ccクラスのXTの場合、32円/kmになるので、数時間を1日とカウントするほうが得になるからだ。



 契約を済ませ、準備を・・・というところで問題点。
 最近の外観重視の流れで、空冷なのにシュラウドがタンクに付いている。もちろんそれはプラスチックであるので・・・そう、マグネット式のタンクバッグが付かないのである。消防法がうるさくなってからの国産車でプラスチックなど考えてもいなかったのだが、シュラウドを忘れていた。
 やむなくシュラウドの隙間に無理矢理マグネットフラップを突っ込み、紐で浮き上がり止めを行う。走っていれば見えないからOK。前はタンクキャップにバッグのゴムを巻き付けてなんとか完了。リヤバッグも安定しなくて、ネットを上からかぶせた。これで安心して走れる。



 帯広を離れてすぐに士幌国道の直線路。速度取り締まりの厳しい区間と聞くが初めて乗る低出力のバイク、違反に問われるほどの速度には達していない。そうかといって速度に不満があるわけではなく、こんな感じが良いのだろうと。



 まずはここへ来たなら寄っておこうのナイタイ高原牧場。あいにくの天気で大パノラマとは行かないが。
 いきなり最初のカーブで開けた眼前にはしばし感動。が、すぐに見馴れてしまい・・・



 糠平湖に出た。ダムサイドから湖の裏を走る林道がある・・・のだが、残念ながら崩落による通行止め。事前に情報は得ていたのであわてない。
 糠平へ来たのは、ここにかつて国鉄が走っていたから。諸々の事情で健在なうちに来ることが出来なかったが、今もこの地はあることで鉄道ファンを惹き付ける。その「あること」がこの林道糠平三股線にある。



 かつての士幌線跡には鉄道の記念館。「ひがし大雪鉄道」などと書かれた駅名標が立つが、もちろんそんな鉄道は存在しない。現実であればどんなによかったか。
 この春、唯一北海道で第三セクターとして生き残っていたかつての池北線が廃止された。士幌線が東大雪鉄道などとして生き残れる可能性は万が一つにもなかっただろう。



 走行中、小さな看板に目がとまった。とっさに引き返して訪れる。
 ここは士幌線の路線跡に木製のトロッコレールを敷設して、自転車を改造した人力トロッコを走らせているのだった。いかにも怪しいが、おもしろそうだと・・・




 ・・・まあ、疲れただけでしたが・・・
 ネイチャーウォッチングというところでしょうか。大きなサルノコシカケなど見たぐらいかな。



 糠平温泉あたりにはいくらか食事の出来るところもあったので1軒のラーメン屋へ。「店主の気まぐれラーメン」は夏場はつけ麺。冷たい麺を暖かいつけ汁でいただく。雑穀米のご飯が付くが、最後につけ汁でお茶漬けにせよと。やってみたらこれはなんとも旨い。



 糠平温泉では味がないと、然別の奥、かんの湯温泉へ行こうと峠を越えてきた。モタードの本領発揮のあと、恐る恐る林道へ・・・と思ったら通行止め。



 ご丁寧に柵脇もロープで閉められているのはもちろんバイクがターゲットだろう。反対側の狭い隙間にタイヤの跡があった。
 この林道を通らないと相当な大回りになってしまう温泉だからここはあきらめる。



 そして、「あること」がここにある林道糠平三股線。ダム側は入れなかったが反対側からは入れるようになっている。
 初めて走るダート。タイヤはARROWMAX、純粋なロードタイヤであるが、「あること」のおかげかダートは非常に綺麗なので走るのに問題なし。それでも落ちている車が居たり、用心に越したことはないがついついペースがあがるのはポジションが手慣れたオフ車のものだから。



 で、「あること」とは。

 ダムがあって鉄道がある。よくあることだ。鉄道がダム湖に沈んだわけ。そんな鉄道の跡を歩いてダム湖に降りる。打ち寄せられた木が転がるあたりは、時期によって水の中にあるところだ。



 かつての国鉄士幌線がダム湖に沈んだ・・・のだが、水量の変化が大きい糠平湖は常に水をたたえているわけではない。雪解け水が集まる夏場には水に隠れる過去の遺物が、水の少ない時期には姿を見せる。
 なかでもタウシュベツ川橋梁はその全貌がダム湖に映える景観で人気が高い。コンクリートの連続アーチ橋は長年の傷みでこのあと何年姿を保てるのかわからない。すでに台風による崩壊箇所もある。

 訪れる人は多かった。しかし、誰も皆、静かにこの景観を眺める。言葉のでない存在感・・・



 林道を行けるところまで行ってみる。タウシュベツ川橋梁を見ることの出来る場所までは通れるようになっていた。



 さきほど入りそびれた温泉。どこでもいいのだが、せっかくバイクの機動力、やはり秘湯っぽいところが良いのかと。
 林道は1回通れば走れるのかダメなのかはわかる。北海道の林道なら問題なく走れるバイクだということがわかったので、ここへ迷わず。



 岩間温泉は林道を11kmほど走った奥にある。
 川渡りがあるのでバイクはここまで・・・オフ車なら迷わず渡るが・・・として歩いて温泉へ。



 川原に湧く温泉。何もない温泉。野趣と言うのかなんというのか。何とも素晴らしい温泉。
 ライダーが数人。そろそろ泊まる場所を探そうという。然別熊ノ湯へは件の林道通行止めで行けない旨伝える。俺もそろそろ先を急がなければ・・・すでに時間は夕方4時、まだ全行程の半分程度。



 日本百名道なる写真集がある。著名な写真家によるものだ。その中に見つけた三国峠、ここが今日走りたかった場所。



 あいにく天気がイマイチで、光の加減がうまくない。見えないことはないが、写真に写らないほどに・・・

 三国峠を下って大雪湖からそのまま石北峠へ回りたかったが、ガソリンがちょっと怪しい。今日初めて乗るこのバイク、まだ給油していないので燃費がどれぐらい走るものなのか。リッター30kmを超えれば留辺蘂まで持つが、停まってしまってはなんともならない。一旦層雲峡まで往復20kmの給油行。



 大雪山の麓、大雪国道を行く。石北峠を超えると道東・・・

 既に暗くなりかけた国道を北見から網走へ。イメージしていたよりずっと小さな街が今日のゴール。

2日目


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