私たちの望むものは
北海道へ通って数年。
時間をふんだんに使える学生ではない。会社の夏休みと言ったって、日程をフルに使えるわけではない。せいぜい4〜5日、それをどういう日取りに出来るのかが直前までわからないものだ。それが社会人たるところなのだが。
そんな事情だから、フェリーを予約してバイクごと北海道へ行くなんてのは難しいことだ。でも慣れたバイクで走りたい。いろんな手立てを考えた。運送屋で陸送してもらうか、フェリーの無人航走を使うか。
どちらも使える手法ではなかった。
挙げ句の果てには、分解して車に積んでいこうということまで考えたわけだが。寸法採りまでしたさ。
だが考えてみれば道央まで2日はたっぷりかかるんだよな・・・
しかたがない、今年もまたレンタルのお世話になるとするか・・・
今年も車を預けるために余分なルートを取る。なぜなのかはまた近いうちに・・・
今年のスタートは、海である。
三重県はセントレアから対岸にある。そのため陸路で行くには大回りになってしまう。そこで三重県の主要な空港ルートは海上輸送なのだ。
2008年夏の時点では、四日市、津、そして松阪から高速船が就航している。この号が発行される頃には、四日市ルートは無くなってしまった。以前は鳥羽から伊勢湾フェリーを利用したルートさえあったのだが・・・さらに桑名からのバスもなくなっている。便利だと思っていたセントレア、徐々に遠いところになりかけてきた。
普段JAL使いなのだが、今回はANA。スーパーシートプレミアム・・・全然プレミアムではないシートのモデルだが・・・を確保したが、この場合帰りもANA必須になる。シートはJALクラスJの方が安くて上等だが、ANAプレミアムクラスには食事が付く。旨かったから良しとしよう。
ということでいつもの新千歳。快速エアポートを新札幌で降り、白石まで普通電車。降りてみれば白石区は結構広く、ホテルまで歩きかけたがとうてい無理と気づきタクシーのお世話に。だったら札幌駅の方が良かったか・・・
翌朝。これまたバイク屋までが遠い。またまたタクシーのお世話に・・・
で、着いたのがここ。
今回はイーグルモーターサイクル札幌店にて車両を借りるのである。
前述通り、今年はDRを持ち込むつもりでいたのだが、レンタルすることを決定したのは、ここにこの車両があったからだ。
ジェベル250XC。96年式の低車高モデルだった。
普段のバイクと変わらない性格のバイクが利用できることがわかったから、今年も安心してレンタルで行くことになった。
ずっとヤマハ系のレンタルだったのだが、元々かなり偏ったスズキ乗り。これならどこへ行くにも信頼できる。
さっそく高速道路で北上を始める。晴れてはいるが北の方は雲が多そうだ。
道央道から深川留萌道へ。快調にリズムを刻むJ425エンジン。
なにほどもなく海へ出た。日本海である。
日本海ルートはやり残したルートのひとつ。
では、日本海ルートを北上するとしようか。
海猫か。
♪海猫(ごめ)が鳴くから鰊が来ると・・・♪ (詩:なかにし礼)
石狩挽歌という歌がある。鰊は昔はたくさん獲れていたのだろう。今では中部地区で見つけることは非常に困難で(まあ身欠きならあるが)北海道へ求める味の一つになってしまった。
鰊御殿なる道の駅があったのだが、大変な順番待ちだったのであきらめて近くの海の家へ。ウニとホタテの丼、これも北海道の味。海の家だが海水浴客は少ない。泳ぐ水温でもないのか。
・・・出ました、シーニックバイウエイ。
萌える天北オロロンルートとはまた・・・
萌えるのか?
そりゃまあ留萌ですからそうでしょうが・・・
まっすぐな道を行けば、バイクもかなり走っている。
リッターバイクからスクーターまで、旅のスタイルはいろいろ。
休憩はセイコマだね。オリジナルブランドの飲料が安いのはありがたい。
このまま日本海側を先端まで行っても良いのだが・・・
明日の天気を見たところ、ちょっと下り坂。そこで内陸へ戻ることにする。
せっかくのジェベルXCなんだ。林道走らなくてどうするよ?
昨年は工事の関係で走れなかった函岳が今年は通れるという。
函岳レーダー道路は「ライダーコース」などの表記もあるとても長い林道だ。往復区間もあるので全線走ると50km以上になる。こういう道を走るのには信頼できるバイクでないと。
めったに列車の来ない宗谷本線にたまたま特急が。スーパー宗谷ではなかったのが残念だが。板きれホームを通過する特急。いやにシュール。
さて、ここからが林道である。美深歌登大規模林道が正式だったか?
これぞ北海道のダートだ!
前も後ろもずっと続くまっすぐな道。
安定感という意味で、フルサイズのオフロード車でなければ楽しめない道ではないか。もちろんジェベルXCに不足があろうはずもなく。大柄な車体とよく動くサスペンション、31馬力のクラス最強エンジン。こんな道にはぴったりではないか。
ほどなく加須美峠へ。ここをまっすぐ行くのが本線だが、ここへ来て函岳へ行かない手はない。
ゲートは完全開放。問題なし。極上の地が待っている。
そしてたどりついたレーダー基地。
晴れていれば360度の展望なのだが、あいにく曇りで遠くは見えない。まあ仕方ない。
意味は知らないが、石積みに一個載せてみる。
ふたたび林道へ戻り、延々55kmのダートを走り抜けた。
まだまだ20km近い林道があるのだが、もう時間が遅くなる。これで十分だろう。
神威岬に着く頃には日は落ちていた。
日が沈むと北海道の夜はかなり気温が下がる。持ってきたウエアを着込んでオホーツクを北上する。
ジェベルのヘッドライトが威力を発揮する時間になってきた。
標識を見ながら残りの距離を時間計算していく。
なんとなく、距離が合わないのが気になるのだが・・・
宗谷岬は完全に闇の中だった。
それだけに静かで好ましい。夏の宗谷岬なんてとっても騒々しいものなのだが。
バイクで来る最後の宗谷岬になるだろうことは想像が付く。
初日に最北までたどり着いてしまったのだから明日からは下るのみだ。
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