其の九 北の大地・消えゆく鉄路

 鉄道に興味のある方は居ますか?
 バイクと同じで「旅の道具」のひとつとして選ばれるのが鉄道。バイクで長旅出来る人ばかりではない、車でも同じ。そういう中で選択できる手段として全国に張り巡らされた鉄道は重宝されます。
 都会を結ぶ高速鉄道も時間短縮の点で有用ですが、「旅」として見たときには地方に向かうローカル線が魅力的。

 しかしながら、ローカル線はどこも乗客数が伸び悩み、健全な経営を続けていくのが難しい。続けられなくなって廃止されていく線区が増えました。ちょうど今の時代もそういう状況であちこち廃線されていっているのですが、そんな状況が一番強かった時代が昭和から平成への過渡期。いま20年経ってくりかえされている様な感じです。
 廃止されていったローカル線の数としては、圧倒的に北海道が多い。縦横に張り巡らされていたものの、絶対的に人口密度も低く、産業用運送としての位置づけが下がりつつある頃に赤字路線となり、一気に廃止されていきました。

 そんな廃線の跡も徐々に消えつつあります。



 帯広から南へ向かっていた広尾線。そこには「愛国」「幸福」という2つの駅があり、人気を博しました。
 今も幸福駅はその姿を残されており、おびただしい数の張り紙などが付けられています。



 線路やホームも残し、キハ22型ディーゼルカーも美しい状態で残されている。
 ただし線路は何処へもつながっているわけではない・・・



 同じく帯広から、北の方へ向かっていたのは士幌線。
 糠平湖による線の付け替えなども経過したこの線には、今も多くの橋梁が残っています。



 そんな中に、その美しさを誇る「タウシュベツ川橋梁」も含まれる。水量が変化するので具合の良い時期の見極めが難しいが、風のない晴れた日にちょうど良い水量と全てがマッチングしたときには、美しい多連眼鏡橋を見ることが出来る。



 日本国有鉄道末期、日本一の赤字路線として名をとどろかせたのが美幸線。美深から北見枝幸までを結ぶはずだったが、廃止になった当時は仁宇布までが営業区間、しかし北見枝幸までの区間もほぼ完成していたと言われています。廃止が決まったとき、すでに敷かれていたレールを速攻で剥がして他へ転用したとか。



 しかしそんな路線の中で、今もレールが生きている区間があります。



 当時の終点仁宇布駅周辺では、今地元雄志が「トロッコ王国」を展開して、残ったレールの上を参加者自身がトロッコ車両で走らせる企画を行っています。
 往時を偲ぶというより、新しいアトラクションとして捉えた方がよいでしょう。



 北へ進みます。日本海岸をトレースしていた羽幌線。ここは通り抜けられる路線でかつ距離も長く、海を眺める車窓もあって旅には人気でしたが、如何せん常時の利用が少なかったか。
 路盤もわからなくなっている箇所が多く、駅跡と思われる箇所もわずかしか見つかりません。



 宗谷岬を回ってオホーツク海側へ向かいます。
 このエリアはかつて多くの路線がひしめいていたのですが、今はあらゆる路線がなくなってしまい、空白区間となってしまっています。



 天北線はところどころ残っていますか・・・



 これは天北線?それとも名寄本線?
 今居る位置がわからなくなってきました。目標とする街が少ない。それでは日常の乗客を確保できないのは明らか。



 オホーツクから太平洋へ峠を越えます。
 ごく最近廃止になったちほく高原鉄道ふるさと銀河線、かつての池北線。その昔は網走本線でもあった。




 味わい深い「秘境駅」が多かったこの路線。いまも駅舎は残っているところが多い。
 一時は観光路線として少しの区間を走らせようと計画もされていましたが、駅構内での動態保存に留まることとなり、各所のレールも剥がされつつあるようです。

 路線の廃止は、国鉄終焉から20年を経た今、赤字路線を第三セクターなどで残したものの費用を食いつぶして廃止されていくところが増えてきた。ここもそのひとつ。
 北海道においては第三セクターがここしかなく、今残るJR路線は廃止に至る路線もごく一部に残っている程度でしょうが・・・



 この路線は石勝線。道東への大幹線で特急街道です。重要な路線ですから廃止の心配はしなくて良い・・・



 ・・・のですが。
 特急街道とするために作られたショートカット路線は無人の原生林を貫くわけで、人口が非常に少ない区域。
 そんな区域にも駅は作られたのですが、なにぶん誰も利用しない。

 いやいや、1日1本では利用のしようがないですが。



 そうして駅が廃止になってしまった。バス停の名称は「楓駅前」・・・すでに駅前ではないのだけれども。

 まだまだいくつもの廃線廃駅があふれる北海道。今後それが増えていくのだけは避けて欲しいところではあるのですけれど・・・

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