坂は照る照る

 東に箱根があれば西には鈴鹿がある。
 古の昔から東西交通の難所となっている峠、西の鈴鹿にも新しい時代がやってきた。



 なにやら語呂の悪い「新名神」が今年2月に開通した。伊勢湾岸道は第二名神だと思っていたが、なぜ「新」なのかはまあおいといて。
 鈴鹿の山を明るいトンネルでくぐり抜ける快適な高速道路は、西へのアクセスを飛躍的に改善した。



 そんな新名神に出来たサービスエリアは「土山サービスエリア」である。
 鈴鹿と土山。これは切っても切れない古からの関係である。 鈴鹿峠が難所として知られていた昔。東海道はここを通って草津へと進んだ。
 新名神はかつての東海道に回帰したルートと言えようか。



 土山は鈴鹿峠を超えるための重要な駅だった。「駅」、すなわち乗り物。難所故に足の弱い人々は馬でここを超えたのだった。
 馬をあやつるのは「馬子」。

 坂は照る照る 鈴鹿は曇る 合いの土山雨が降る

 鈴鹿馬子唄に謳われる土山がここである。



 高速道路が米原回りの名神となり、一時主幹線としての順位が下がっていた鈴鹿。新名神によって再びその順位を上げるのは想像に難くない。
 そんな今だから乗り遅れないように。土山は今、宿場町らしさを再発見しようと整備に躍起になっている。



 本陣跡。主要駅だけに泊まり客は多い宿場だったのでは。



 現代の鈴鹿峠は国道一号線。上下線を分けた近代的な作りだが、やはり坂は厳しい。



 そんな峠の上に、かつての鈴鹿峠道が?



 ダートの道はすぐに、車両の走れる状態でなくなった。
 名街道の峠だから、ハイカーの姿は多い。入ることはやめた方が良い。



 鈴鹿峠の脇に、別の峠もある。神大滝林道は数年前の時点で滋賀県側は舗装、三重県側は深いクレバスを含む廃道だったが、通行止めとされるなど復旧の手立ては取っていない様だ。



 林道脇から猿の鳴き声がする。

 しばらく様子を見ていたら、小さな子猿が近寄ってきた。
 子供とはいえ野生の動物、安易に手をさしのべることは良いことでは無かろう。また近くに親猿もいるはずだ・・・



 他にも鈴鹿を超える峠はある。
 「安楽越」というぐらいで、鈴鹿より楽な峠だったのだろうか。



 近くを新名神が通ったことで工事に使われた跡はあるが、鄙びた峠道が県境を越える。



 降り立ったのは、石水渓。いくつもある渓谷は鈴鹿山脈が作り出す憩いの場。
 林道が奥へ続いている。鈴鹿の林道は走ることの出来ない道が多い。



 いささか荒れた道は、そこが行き止まりだから。
 急峻な山を持つ鈴鹿を簡単に超えることなどできないのだ。



 このほか鈴鹿の峠としては旧鈴鹿スカイラインの武平峠、歩いてしか越えられない八風峠あたりか。

 かつてはどれも「峠」だった。
 新時代の鈴鹿は、もはや「峠」ではなくなった・・・

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