第５１話 ついにこの時が
６月末日深夜。ガソリンスタンドの長蛇の列の中に俺は並んでいた。
明日から大幅に上がるガソリン価格。もとよりどの車もバイクもハイオクオンリーな俺の場合、値段はほとんど気にしていなかった。毎月繰り返される末日のガソリン渋滞も横目で見ていただけ。運悪くガソリンが今日切れてしまわなかったら並ぶこともなかったろうに・・・
このご時世とあって、バイクが人気な様だ。
会社の駐車場を見ても、今まで乗っていなかったはずの人たちがバイクで通勤している。
俺は車に関わる事情で一時期バイク通勤を余儀なくされたことはあったものの、基本的にバイク通勤はしない。余暇と仕事の区分ということもある。
だが、「このご時世」という言葉でバイクへの許容が高まっている今日だから。一度通勤に使ってみるか・・・
７月初日。いつもよりちょっと早めの時間に準備する。バイクには準備が必要だ。
車ならエンジンかけて数秒で走り出せるが、バイクにはヘルメットかぶってエンジン暖機して・・・ロックも外さなきゃいかんな。靴もライディングシューズは紐結ばなきゃ・・・てなことで２分ほどロス。
田舎の街でも通勤渋滞はある。渋滞ならバイクが速かろう・・・が、すり抜ける隙間のない細い道では意味なさず。田んぼの真ん中の直線道路に至っては、加速力が段違いで結果的には決してバイクは速くない・・・通勤にかかる時間はほぼ同じ。
ただし燃費は大きく違うね。
街中での車の燃費は７ｋｍ／リットル行くかどうか。バイクは３０ｋｍ／リットル前後。ヘタすりゃ車の１日の燃料で１週間通えるわけだ。
雨の降らない日を選んで何回か通勤した頃、梅雨が明けた。
とつぜん暑くなった日々。朝７時前からすでに猛暑。夜９時を回っても熱が残る。
俺はさっさとバイク通勤をやめた。
ここ２〜３ヶ月、あまり走っていなかったのは体調を崩していたためで、車のエアコンが一番よい条件であることがわかったことと、食事の買い物をしたときの安全性（気温による）を考えたとき、バイクじゃやっぱりまずいだろうと思ったこと。そして、バイクに乗るにはやはり長袖がいいよな・・・でも作業服着てメッシュジャージは着れんだろうよ・・・と。
ま、８月も後半になれば気温も落ち着くだろう。体調が安定してくればまた考えても良いかな・・・
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