第50話 行こか戻ろか

 行く前からいろいろと情報は入っていた。

 作者がウデのある人であることはわかっていたし、前例からも簡単に行けるルートでないことも予測に難くなかった。先に行った人たちからも談話はいろいろと。
 前晩、その日に走った人と電話で状況確認。かなり状況は悪そうだ。それなりの覚悟は必要なようで。



 このぐらいの道に入ることは時々ある。ただ、どこまで行けるかわからない。
 今回はコマ図を便りに走っているのだから、抜けられる筈だ。

 生い茂った草が、すでに使われていない道であることを示している。その草が切れたとき。
 道は崩れたような急降下となっていた。

 平らな位置にバイクを止めてインスペクション。
 路面はしっかりしている。崩れる様子はなさそうだ。ただ、土質がよくない。滑るのだ・・・
 MT21というタイヤはこういう土質にはそこそこの強さを見せるので乗ったまま降りることも出来そうだが、急なS字カーブがある。そこまでに速度を抑えるのが難しい。

 無理は禁物。ここは降りておとなしくズリ落とす。エンジンを止め、1速に入れ、クラッチを繋いだり切ったり。後輪加重がかかっていないのでエンジンブレーキにはならない。車輪の滑る抵抗を利用するしかない。



 さらに進んでいくと路上に倒木があったが、すでに朽ちていた。
 先人のタイヤ跡がある。車は入れない狭さなのでバイクだけ。だから中央部だけが崩れていた。
 朽ち木ならば跳ね上がることはないだろう。乗ったまま通過する。



 今度は垂れ下がった倒木だ。
 落ちてくる可能性はないか、確認しながら。もし落ちてきたら大変だ。

 フルサイズ車では立てたままでは潜れない。
 降りて大きく傾けながら、自分も大きく体を折りながら、下り坂をずり落ちないように。



 走っていくと、またまた倒木が現れた。それもご丁寧に3本も・・・



 ここも先人が通ったあとはある。丸太に枝をあててきっかけを作ってある。これなら越えられそうだが、問題は路面だ。
 停まっていても沈んでいくような柔らかい路面はまっすぐ進めないほどにグリップしない。バイクを押そうにも抵抗が多すぎて進まない。それ以上に自分の足も潜っていく。



 草の上までなんとか引き戻して少し歩いてみる。
 1本目を越えれば2本目は問題ない。路面も少し硬くなり、丸太も朽ちて崩れている。これは普通に越えられる。



 問題は3本目だ。この丸太は滑る・・・
 なんとかきっかけを作ろうと周りを探して枝など並べてみるが、直径も太くこれはどうも難しそうだ。

 持ち上げて越えるしかないのか・・・

 バイクをこの上に倒して、前輪を越えさせてしまえばあとはなんとかなるだろうか。サイドスタンドが使える状況ならば簡単に行けそうだがここもやや柔らかいのでそうもいかない。探してみたが板状の木はない。

 しばらく考えたが、ここは撤退することにした。

 人数が居れば越えるのは難しくないだろう。それではコマ図で行き先を探しながら走るラリー形式には興味半減。だから一人で走る。
 それならばコマ図の先を読めばいい。幸いここは山が深くない。携帯電話が通じるところだった。
 昨今の携帯電話にはGPS機能が搭載されており、現時点の位置をつかむことが出来る。林道は地図にないが、入ってきた道はわかる。そこから出口と思われる方向にある道を探し、次のコマとその次のコマを特定する。

 無理に行かなくても、ここで先を諦める必要はない。自分のウデに合わせて迂回すれば良いこと。
 行こか戻ろか、それは冷静に見つめて考えていけば良いのだから。

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