乗せる旅

 タンデムシートに誰かを乗せて走る。それもバイクの楽しみ方の一つ。
 安全面の問題などネガな部分もあるから、否定的な意見が多いのもわかる。でも、パッセンジャーを気遣うことで自分の安全も高まると考えることだって出来る。2倍神経を使うけど、楽しさも2倍。一人で走る時と比べると、景色の見え方まで変わってくるような気がする。
 もちろん、後ろに乗せるのは女の子がいい。ビグスクやアメリカンで野郎の2人乗りをよく見かけるけど、そういうのじゃないんだ。エマージェンシー的な移動手段ならそれもありだけど、旅の友としてなら自分が感じてる楽しさを共有して欲しいと思える相手じゃなきゃ。同姓の友達でもそれはアリ?オレは異性じゃなきゃヤなんだけど…
 あ、でも自分の子供なら男でももちろんOKよ。ウチには女の子しか居ないけどさ…子供にはいろいろ伝えたいことがある。別に大きくなったらバイクに乗れと言いたいわけじゃない。家族みんなで楽しむのは難しい趣味だけど、それでもバイクを愛する父親のこと、バイクで走ることの楽しさを少しでもわかってくれたら、と思う。
 昨年、8歳になった長女を初めて後ろに乗せた。もっと小さな頃から乗せている親も居るみたいだが、ピリオンステップしっかり足が届き、自分で踏ん張れるようにならなければ乗せるべきではないと思う。
 そして今年の一泊ツーリング。
 行きつけのバイク屋が毎年秋に行うこのイベントに、昨年と同じく2人乗りで参加した。昨年はまだワインディングで怖がっていた長女、あれ以来ほとんど乗せる機会が無かったのに、今年はもうイケイケだった。単にスピードに慣れたというだけでなく、他のライダーが後ろから見ても明らかに乗り方がうまくなってると感じるそうだ。バイクの動きをいつの間にか体で覚えてしまったらしい。子供の成長の早さにはホントに驚かされる。
 昨年は、タンデムで走る僕自身よりも、周りの方が全体のペースに合わせられるかを不安視していた。ファンデューロというバイクをよく知らなかったせいもあるだろう。今年はさすがに誰もそんな風には見てこない。うまく乗れば、タンデムは足枷にはならない。
 参加者は2人を除けばすべて30歳以上のライダー、もちろんタンデムの経験はある。でも、それで本気で長距離を走ったことはほとんど無いのだ。自分の経験に無いことはなかなか理解できないもの。
 中でも子供を乗せた経験は無い人の方が多い。コマジェのライダーはまだ息子が小さいので、これから練習を…でウチの娘を一度乗せてみたいと。違うバイクも乗ってみたいとの娘の意見もあって、途中GSから昼休憩場所までのわずかな距離、パッセンジャー貸出。
 「とても静かだからマイク無しでもお話しできるけど、遅〜い!」
子供の感想はストレート…
 伴走車の4輪には、店長の娘も乗っている。昨年は彼女もバイクの後ろに乗っていたが、今年は直前に風邪で熱を出して学校を休んでいたとかで、大事を取ってバイクは乗らないことになっていた。しかし、あまりにも楽しそうにはしゃぐウチの娘を見て、耐えられなくなってしまったらしい。
 「タンデム菌」は止まるところを知らず。4輪の現地集合でお母さんと参加している女子高生も、帰り道の少しの距離だけバイクの後ろに。乗りたい子、乗せたいヤツ、それぞれに…
 店長の娘と一緒に来ていた友達も。家族はまったくバイクに縁が無いらしい。親の居ないところでバイクなんてよからぬものを覚えさせてしまったよ…でも不良の原付2人乗りとは別物だから。
 正しくバイクに乗ることを覚えれば、バイクと正しく向き合うことが出来るはず。こうやってオレ達が教えていけば、今の子供達が大人になったとき、またバイクに乗りたい人が増えてくるんじゃないだろうか。女の子ばかりだからなんとも言えないけどさ…
 思わず大人気となったタンデムシート。ウチの娘は?実はヘルメットは彼女のだけしかなくて、みんなで使い回ししていたから帰り道はほとんど乗れず。それもコマジェに少し乗っただけでファンデューロには一度も乗れなかったので、まったくおもしろくなかったそうだ。こりゃあ来年は予備にお母さんのヘルメットでも借りてかないとダメかな?
写真・文 : 河村 敬

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