第二十九回 YAMAHA YP125FI Majesty

 ツーリング=大人数で行くもの、という図式しか思い浮かばない人もいるぐらい、マスツーリングはごく一般的なオートバイの楽しみ方ですね。個人的には一人で走るほうが好きなのですが、たまには大人数で走るのも楽しいものです。
 最近はネットで募ったメンバーなどいろいろな集まりがあるようですが、よくあるのはバイクショップ主催のもの、常連客のグループ。
 同じ車種ばかり(ニンジャとかCB750とか)のクラブもありますが、私が参加しているホンダ系ショップのツーリングは車種はいつもバラバラです。以前と比べると他メーカー車は少なくなりましたが、それでもオフや2スト250のレプリカから隼、ゴールドウイングまで、多種多様なオートバイが集まります。みんな同じ車種というのも連帯感あって良いのでしょうが、違ったバイクでペースを合わせて走るのもマスツーリングの楽しみの一つだと思いますね。
 しかし、昔より年齢層が上がったせいもあるのでしょうが、参加するオートバイの排気量が軒並み大きくなりました。昔はいわゆる中型が中心だったんですけどね。今は私の650ccでも下から数えたほうが早いほど。中型車だとちょっとペース的に厳しいかもしれません。
 なのに…なんでそれで来るよ?
 それもわざわざピンクナンバーなんて。通勤用だって?
 
 彼は昨年も参加していたけど、バイクはモタード仕様に改造したXR250('90レーサーモデルの公道仕様)でした。異常に速く(後にボアアップ済みと判明)、ワインディングではファンデューロが軽く引き離されるほど。もちろん長年エンデューロなどで鍛えたライダーの腕もあるんですが。
 その後、XRを売ってWRを買い、美浜のモタードレースに出ているという噂は聞いていました。でもWRはナンバー取れないみたいな話も聞いていたので、今回何で来るんだろう?と思っていたのは確かなんですが。
 腕は認めるけど、ホントにそれで大丈夫?
 「交代しますか?」て…してみましょうか。
 125ccクラスは、通勤用で重宝されているカテゴリー。税金や燃費など維持費は安く、任意保険も車のファミリーバイク特約が使えてお得。高速はもちろん走れないけど、町中なら必要十分な速さがあります。ボディサイズは大きすぎず小さすぎず。一応原付の枠に入っていますが50ccとは全く別物、ちゃんとしたオートバイです。
 私も1台、通勤用にエリミネーター125を持ってますから、そういう125ccの良さはわかるんですけど。何と言ってもパワー不足なのは間違いない。やはり大型の中に混じって走るのは無理があるでしょう。
 しかし、乗ってみれば納得。これは結構速い。
 排気量に物を言わせて怒涛の加速を見せる集団の中でも、ほとんど離されないでついていける。スピードも十分で、125ccとは思えないほど走ります。なんでも120km/hぐらいまでは出るとか。
 このYP125FI Majesty、通称「コマジェ」は、台湾ヤマハ製作の車両をプレストコーポレーションが輸入しているもの。インターカラーがいかにもヤマハです。たとえワンパターンと言われても、これぞヤマハのスポーツバイクと主張するカラーリング。
 FIの名のとおりインジェクションが装備されており、抜群の燃費を誇ります。パワー的にも初期モデルのキャブ車ではまったく相手にならないそうで。
 コマジェはこの台湾製の他、イタリアヤマハのものもあるそうですが、そちらはいかにもヨーロッパ車らしく?最高速重視になっているそうで、低速での加速、扱いやすさは台湾モデルのほうが上とか。これよりも最高速が伸びる125ccって…まあ昔の2ストなら150km/h以上出るものもあったから不思議ではないんですけどね。
 マジェスティといえばビグスク、=大きいというイメージありますけど、コマジェは思ったより小さい。そのせいか、ポジションはかなり窮屈です。クルージング時はアメリカン的な乗り方になるわけですが、シートバックに引っ付くまでどっかり座ると、上体が立ってハンドルが妙に近い。逆に少し前目に座り、腰というか背中でシートバックにもたれるようにして、上体を引いて乗るのが良いでしょうか。しかし膝の曲がりはさらに大きくなるので、どうしても窮屈感は残ります。
 ロングホイールベースに前後12インチのタイヤ。フュージョンなどの10インチに比べればマシなんでしょうが、やはり小径独特の癖があります。
 コーナリング時の安定は、まあまあといったところ。コーナリングスピードは意外に速く、ごく普通のライダーが乗る400ccネイキッド程度ならワインディングで追い回すことも可能かと。ただしあまりスピードを上げるとフロントの動きが妙で不安を感じます。実際はなんともなく曲がれるのかもしれませんが、ちょっとこれ以上はどこへ向かうのかわからない、という感じです。
 ふんぞりかえって乗るアメリカン的なポジション、しかしそれっぽい操縦感を思い浮かべていると、かなりギャップを感じますね。通常のアメリカンは前輪が大きく細いので、カーブでは前輪のジャイロ効果を強く感じ、意外とコーナリングも楽しめるものです。でも12インチで太目の前輪にそれはありませんね。
 フロントの動きが妙なのは、スクーターなので極端にリアヘビーなことと、ライダーも後傾して乗るため前輪が遠く、とにかく抑えが効かないからでしょう。足をステップの後方ギリギリまで引き、上体を少し前傾してハンドルを押さえこみ、腰を内側にずらして…いわゆるハングオン風の乗り方をするとコーナーでもピタっと決まるようになりました。ただし限界を超えた時にどうなるか予測がつかないので、無理は禁物です。
 前ブレーキは大径のディスク、後ろはドラム。250ccクラス以上になるとほとんど後ろもディスクが採用されていると思いますが、ドラムでも制動力は十分です。ただしタッチは今一つ。
 この車両には、グリップヒーターが装備されていました。冬場でも薄いグローブで乗ることが出来ますね。メッシュでもしっかりグリップを握っている間は大丈夫。握り続けると熱すぎるぐらいです。でも、ブレーキに指をかけると指先だけ冷たく感じます。このとき走っている平湯近辺は10度前後の気温でした。この条件ならハンドガードに手が隠れるオフ車の方がヒーター無しでも寒くないかもしれません。
 フルフェアリングも、空力でどうなのかは知りませんが、防風の効果はあまり感じられませんでした。見た感じではファンデューロよりも良さそうなんですが、全体的に低い車体のフォルムと、やはり足の間に何も無いスクーターなので風を遮るものが無いのがネックでしょうか。
 タンデムのし易さはやはり見た目の通り。しっかりしたタンデムバーがあるため、ライダーに負担はほとんどかかりません。
 しかし、ストレスが無いことが逆に心配になることもあります。後ろに乗せているのが子供だと、ほとんど乗せている感覚が無い。だから落としても気がつかないんじゃないか?という不安が。ファンデューロだとパッセンジャーが近いので、常にライダーがパッセンジャーを支えている重さを感じますが、それは確かに乗せているという安心感でもあるわけです。
 
 ビグスク自体が好みじゃないので、いろいろとネガな感想も書いてしまいましたが、総じて言えば非常によく出来たマシンです。登坂車線のある上り坂ではスピードが出ないなど、どうしてもパワー不足は否めないので、こういったマスツーリングにはやはり向いていないと思いますが、単独のツーリングなら高速を使えない以外にデメリットは無いように思います。
 125ccクラス、いわゆる小型車というカテゴリーは、免許制度の関係でヨーロッパや中国、タイなどでも人気があるようですが、日本では昔から今ひとつメジャーになりきれませんね。今では新車の国産125ccにメイド・イン・ジャパンは無くなってしまいました。ミッションで唯一買えるエリミネーター125もタイ製です(私のは初期型で日本製です)。
 しかしガソリンの価格が高騰している今、燃費が良い小排気量車は間違いなく重宝するはずです。実際、コマジェの人気の高さを見ると、もう少し各メーカーに、このクラスに力を入れてもらっても良さそうな気がします。
写真・文 : 河村 敬

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