起承転結

起の章 大空と大地の中で

 歌になりやすいのは、北。
 異論はたくさんあるでしょうが。

 実際に、北がどうのこうのという歌が多い。そしてそういう歌を聞いて「北へ行こう」と思いを馳せる。

 演歌に多いフレーズかもしれないが、俺が北に惹かれるきっかけは、学生の頃に集めた松山千春の歌だった。北海道に住み、北海道を歌う。けっしてど演歌ではなく、フォークソングとして。
 導かれて訪れた回数はすでに両手にあまるはず。それでもまだまだ飽くことなく北詣では続いている。

 そして今年も夏が来た。



 今回は、スタート地点が羽田。千歳なら名古屋からでも多くの便があるが、帯広へ行くのは昼頃の1本のみ。
 通常なら前日に入って一泊、朝から・・・というところだが、どのみち店が開く時間は10時頃。羽田からのアサイチ便なら、10時半には着くことが出来る。結局羽田に前泊するのだからどっちがどうだと言うところだが、これは前日が仕事になる可能性を持っていたからだ。深夜の大垣夜行・・・じゃねえや「ムーンライトながら」か・・・を使えば出発までにたどり着くことが出来るという安全策をとった結果だ。
 結果的には、前日に実家へ車を置きに行き、延々列車を乗り継いで羽田に前泊ということに相成ったわけだが。

 羽田空港、朝8時。この時間の飛行機はいったい何本あるのだろう・・・

 搭乗時刻は定刻だったが、なかなか動く気配がない。どうも混雑していて遅れを生じているようだ。30分以上遅れてやっとテイクオフしたエアバスA300。前日のJRも遅れて新幹線を待たせたり、今回は時間が今ひとつ波乱含みか。



 飛んでしまえば良い天気で安定した飛行を続けたエアバス、5分ほど挽回して到着したのは帯広空港。
 道東の主要都市でありながら飛んでる飛行機がそれほど多いわけではない。だけど飛行場は結構立派。場所はいくらでもあるものね。

 羽田もそうだし、いつも使うセントレアも千歳も列車が接続しているのだが、ここにはそれはない。広尾線が健在であれば、また違った交通アクセスもあっただろうに。バスに乗り帯広駅へ向かう。



 今年もお世話になるのは昨年同様「YSP帯広」
 今年は早めに手を打っておいた。

 林道を走ろう、という目的があった。

 昨年、当初は眼中になかったのに結果的に温泉を目指して林道をいくつか走った。今年は、最初から林道が目的のひとつにある。こういう時にはやはりオフロード車両が良いだろう。
 YAMAHAの店だけに、借りるバイクはもちろん同社。そしてオフロードとなれば、やはりこれ。



 渋滞していた帯広を抜けて新得へ国道を行く。郊外に出ると道はまっすぐに。



 北海道にはソバがある。
 なかでも新得の蕎麦は名高い。「新得そばの館」で昼飯とするが約1時間待ち。他へ行こうにもここは広い北海道。おとなしく待つが吉。待つ間にはもうひとつの名物、「そばソフト」を賞味しながら。いや、美味いよこれ。



 一面の蕎麦畑が大地に広がる。11mmの広角レンズにも入りきらない広さ。
 青い空と白い蕎麦の花。PLフィルターを強めに効かせて紺碧の色に切り取る。

 ♪果てしない大空と 広い大地のその中で

 千春の歌が聞こえてくるようだ。



 順番が回ってきた。シンプルに盛り蕎麦。
 蕎麦の風味は良い。人の出入りが多すぎるからか、そば湯が今ひとつだったかなあ。



 新得から、山を目指す。
 今回の主目的のひとつ、十勝周辺の長大林道への突入だ。

 パンケニコロベツ/ペンケニコロベツの2本の林道が平行して走るこの界隈。いずれも30kmを遙かに超える。乗り始めたばかりのセローであることを考え、よりフラットで明るいというパンケニコロベツを選択した。



 この長いストレートダートが北海道の林道の醍醐味、と言えるだろう。
 ただし道は砂利で、いまひとつ安定感に欠けるセローでは思ったほどスピードが上げられなかった。

 いつ終わるともつかぬ長いダート。もう少し自分に合ったバイクなら・・・



 峠についた。右手はペンケニコロベツ。この先はシートカチ林道になる。
 途中で追い抜いてきた大型バイクとはここで分かれた。帰りはペンケで帰ろうか・・・



 長く続いたダートがとぎれた。ここまで40km以上。
 が、これで終わりではない。舗装はこの先100mほどで終わる。ここからトムラウシまではまたダートを走っていくのだ。



 たどり着いたトムラウシ温泉にはトライアル車の姿が・・・まさかこれで林道走ってきたはずは・・・無いよね。ガソリンが足りんわな。



 トムラウシ温泉はこの山奥に立派な建物を持つ。その東大雪荘で入浴を。

 本当は、今回の北海道の目的はここではなかった。

 この近くに、ヌプントムラウシという秘湯がある。また別の林道を越えて行くのだが、その林道が7月後半の時点で峠付近の崩落で通行不可能という情報があった。ただしそれは車での情報で、バイクがどうであるかは調べが付かなかった。



 ヌプン峠を越えて行く林道のゲートは開いていた。ここはシートカチ林道をでてわずか何百メートルというところだ。見に来れば良かったか・・・だが、なにぶん時間の少ない特攻ツアーなので行ってみたが行けなかった、ではちょっと。
 また、夏の暑い時期には虻が多いというのもこの界隈の特徴で、無理してこの時期になあ・・・ということで諦めていた。秘湯と呼ばれるものの有名になってしまったヌプントムラウシ、それでもこの林道が舗装されるほどにはならないだろう。またいつか機会はある。



 林道が計算速度より若干遅かったのでだいぶ時間が圧している。
 峠を駆け上るにはちょっとパワーが足りんなあ。



 狩勝峠に着いた。
 ここは初めてではない。数年前の初ツーリングの時に逆から通っている。

 すでに時間は夕刻を迎えようとしていた。峠の茶屋のテレビから連休の賑わいを伝えるニュース。そして事故のニュース。バイクで接触して、足を失ったのに気づかずに走っていたという信じられないニュースとか・・・気をつけなければ。



 「熊出没注意」というのは北海道のひとつの象徴的な言葉なんですがね。

 この写真を撮って走り出した。写真に写っている対向車の2台目のあたりかな?


 右手から出てきた大きな物体がゆっさゆっさと・・・って!


 熊だよ熊!でけえ!


 カメラに電源を入れたが間に合わなかった・・・って撮ってる場合か。
 ここは天下の2桁国道である。自然の熊を見るのは初めてではないが、それにしてもねえ・・・



 昨年、巡り合わせが悪くて手に入れることが出来なかったホクレンのフラッグ。今年は早々に一本。
 狩勝峠を越えるとそこはもう道北の扱いになる。南富良野でゲットした青い旗。これがなくて何の北海道ツーリングかと。



 富良野・美瑛はすでに暗闇の中だった。何度も通っているルートだから良いけれど。
 ところでいつも気になるこの道、「シーニックバイウエイ」て何だろう?日本語にしてくれんかなあ、うたい文句は。



 旭川に宿を取った。
 昔来たことのある居酒屋を探し出し、宗八ガレイで一杯。以前来たときは元旦だったから唯一開いていた居酒屋がありがたかったが、今回は失敗だったかな・・・

承の章 空を飛ぶ鳥のように野を駆ける風のように




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