冬(?)のツーリング

 冬はどこに行ったのだ?という感じの今日この頃。
 本来は1月・2月と言えば正に冬本番で、各地で雪祭りなど寒さを利用したイベントが続く。しかし、今年はどこも暖冬による雪不足などで、客足の伸び悩み、イベント自体の不成立など困った状況が続いているという。
 東京ではこの冬一度も雪が降っていないらしいが、名古屋でも12月に一度降ったきりか。ほぼ毎日バイクで通勤している自分には嬉しいことでもあるが、札幌に住む友人から「雪祭り始まったけど、2日目にもう雨で溶けそうだ」などとメールが来たりしては、笑ってばかりもいられない。
 しかしまあ、春のような陽気はバイク乗りに走れと誘っているようで。普段なんとなく北の方に走ることが多い自分は、毎年必然的に半冬眠状態になっていた。冬場に行ったツーリングらしいツーリングと言えば、まだ初心者の頃に兄貴達と南紀に向かったことぐらいしか覚えがない。
 でも、今年は山の上でも雪が無いぐらいで、低山の林道程度ならまず積雪や凍結の心配は無さそうだ。この機会を逃すのは勿体ないというもの。
 てなわけで、2月に入ってすぐの平日。
 まだ朝焼けの残る午前7時。名古屋インターから東名へ、ファンデューロを走らせる。
 土日に休むことの方が難しい仕事柄、仕方ないことではあるが、出がけに必ず通勤ラッシュに引っかかる。インターの入口からすでに多かった車は、早速日進JCT付近で数kmの渋滞。高速入ってすぐスローダウンして足を着く状況は、さすがに選択を誤ったと思った。が、それも束の間、三好インターあたりで流れは回復。毎度大渋滞に遭っていた豊田JCTも難なく通過出来た。快調に南へと走る。
 別にいつものように北へ向かっても大丈夫そうだったが、今回は南向き、そして滅多に行かない東の方へ。年末の忙しい時期に、寒くても伊豆あたりなら走れるか?と意味もなく気分転換に計画を練っていたので、今回はその流れで静岡方面へと走ることにした。ただしさすがに伊豆は名古屋から日帰りは難しいので、とりあえず御前崎あたりまで行こうと。
 豊川インターで東名を降り、新城へ。せっかくだから近辺の林道を走って、浜名湖の北側から浜松へと抜けていく。
 このあたり、いくつか長い林道がある。中には一度も走れないまま全舗装となってしまったものもあるが、まだまだ残っている方だ。
 しかし限られた時間でそう都合良く繋げられるわけではない。短くても近場で入りやすいところを探す。ツーリングマップルには書かれていない細かい林道を探して走る。
 林業や治水のための林道はいくつもある。長くはない、展望も利かないがそれなりに楽しめる。
 そのほとんどがピストン、それはしょうがない。行き止まりまで走ってはUターンを繰り返す。でも、それにファンデューロでどこまで対応できるか。幅のある道なら普通にUターン出来る。フラットな路面ならアクセルターンも綺麗に掛かる。でも押し歩きで方向を変えねばならなくなった時、この車重はきつい。サイドスタンドを支柱にして回すなんて技もとうてい使えない。
 パワーはある。ブレーキも利く。意外とどんなところでも行けてしまう。ちょっとしたジャンピングスポットでも条件さえ揃えば飛べる。
 しかし深い轍になったら抜けられない。ギャップの連続をフロント上げたままリアだけで飛ぶ、そんなことは絶対に無理。所詮、250オフと同じ走り方をすること自体が間違っている。
 脇道も行けそうな所は入ってみる。ここはどうだ?…少し歩いて下見をする。奥がありそうだ。バイクが通ったらしき形跡もある。でもファンデューロでは無理っぽい。
 一日中ここで遊んでいるわけにもいかない。あきらめて他の山を目指す。
 「おお、大きいバイクだな」
 止まって地図を見ていたら、散歩中?の地元の方が話しかけてきた。まさかこんなデカいので上から降りてきたのか?と。さっきの細い林道はやはり上に抜けているらしい。休日になるとオフ車が何台も降りてくる、とのこと。
 実はこの山の向こうに長い林道があるのだ。まともに入ろうと思うと国道をかなり上がる必要があったので、地図にない抜け道を探っていた。思惑は当たっていたようだが、残念ながらファンデューロで通れるような道ではないそうだ。
 長い林道は他にもあてがある。ボチボチそちらへ向いていけばいい。
 まだ時間もある。途中の林道らしきところはとにかく入ってみる。
 首から提げていたデジカメが突然動かなくなった。レンズが出たままウンともスンとも。バッテリー入れ直せば再起動するか?…バッテリーが無い!
 途中で落としたらしい。バッテリー切れでスペアに入れ替えた時、フタがちゃんと閉まっていなかったか。
 来た道を戻ってみる。路面を注意深く見ながら。
 1本前に通った林道の行き止まり、Uターンした場所に落ちていた。見つけやすい場所で助かった。このまま携帯で撮り続けるのは不便だから。
 要らないことに時間を使ってしまった。そろそろ移動を始めないと。
 山間の田舎道を走る。綺麗な舗装路、少しずつペースを上げていく。
 しかし暑い…ホントに2月か?
 さすがに朝の高速は寒かったから、いつもの通勤と同じスタイルで走っていた。日中走るには暑すぎるとわかっていたから、分厚いオーバーパンツを脱いでも邪魔にならないように空のリアバッグを積んできた。ウインタージャケットの下に来ていたフリースも脱ぐ。
 でも、まさかと思ってメッシュグローブまでは持ってこなかった。蒸れないはずのゴアテックスウインターグローブ、中で汗が滲む。
 さて、いよいよ通り抜けの長い林道、扇山林道へ。
 …通行止め?
 材木の切り出し作業中とのこと。元来それが道路設置の目的なのだし、平日だから仕方ないか。
 しかし元から入ってはいけない林道でなし、ゲートで止められているわけでもない。行けるところまで行ってみても構わないだろう…と勝手な解釈で進んでみる。
 路面は超フラット。ツーリングマップルにも「初心者向き」と書いてある。普通の乗用車でも難なく走れそうだ。現に林道に入ってすぐ、2台の乗用車とすれ違った。
 しかしその2台、工事や林業の関係者っぽい感じではなかったが…
 良く整備された路面だが、ペースを上げると細かく浮いた砂利で結構滑る。タイヤを引っかける轍も無いフラットダートは少々走りにくくもある。
 昨年末にBSから履き替えたミシュラン・アナキー、直線で軽く蛇行するので一瞬パンクしたかと思ったが、コーナーでは特にグリップが悪いと感じるほどではない。パターンが大きく、見るからにオンロードのグリップ重視という感じだが、ダートでもフロントは安定しているし、リアの滑りもコントロールはし易い。車重のあるファンデューロを横に振りながら走る林道は実に楽しい。
 2kmほど進んだところで、再度通行止めの表示。最初と同様の判断で進んでもいいかもしれないが、見るとテープを張って封鎖していた跡がある。さっきの乗用車が通るために外したようだ。この先の作業場所まで行ってみる手はあるが(実際お願いすれば脇を抜けさせてもらえることも多々ある)、ここは素直に引き返すのが大人の対応か。
 イマイチ腹一杯とはいかなかった2007年初林道だが、ダート走行の楽しさを久々に味わうことが出来た。たまにしか出られないとどうしても高速で足を延ばす旅ばかりになるが、今年はもう少し林道主体のツーリングを増やしてみたい。
 見渡す限りミカン畑ばかりの三ヶ日を抜け、浜名湖へ。
 浜名湖を左に…違う、反対だ。右に見ながらR362、姫街道で浜松方面へ。
 浜松市街が近づくにつれ、どんどん悪くなる流れにたまらず姫街道から離脱、浜松環状で弁天島へ。R1に出ることなく細い県道をつないで、防風の松林が続く海沿いの道へ。
 日本三大砂丘の一つ、中田島砂丘。
 実は初めて来た。鳥取砂丘をイメージしていると少し拍子抜けだが、砂浜としては異様に広い。非常に強い風で風紋が出来る砂浜は、自分の歩いた足跡も見る見るうちに流れる砂で消えていく。
 大きな橋で天竜川を越え、一路御前崎へとR150を行く。
 地図上で見る限り海沿いを走っているのは間違いないが、分厚い防風林が視界を遮り、海は全く見えてこない。ひたすら直線が続くだけの退屈な道だ。
 中田島砂丘を出た時点ですでに午後1時を回っていた。御前崎で昼食のつもりだったが、少々林道に時間を使いすぎたか。
 御前崎まで34km、時刻は午後1時20分。ペースが良ければ2時までに着けるか?と思ったが、単調な片側1車線でトラックも多いR150、ペースはかなり悪い。特にどこの店に入るとか決めているわけではないが、昼の営業は2時までというところが多いから、なんとかそれまでには着きたいと思ったのだが。
 そして、2時を数分回った頃。急に視界が開けて、太平洋と白い灯台が目に飛び込んできた。
 途端に海からの強い風がファンデューロを路肩に押し出そうとする。沖にはその風と大きな波を目当てに集まっているウインドサーフィンの人たち。雲一つ無い空の下で輝く海、気持ち良いな…とシールドを開けて走っていると、顔に砂がぶち当たる。
 何はなくともとにかく昼飯。朝飯を東名、豊田の上郷SAで食べてから、何も口にしていない。
 正直腹が減ってたまらなかったので、途中にあるラーメン屋とかの誘惑に負けてしまいそうだったが、せっかく海までやって来たのに魚を食わんでどうする。
 御前崎先端を少し回ったところにある大きなドライブインのようなところは、残念ながら休みだった。時間的にどうかとは思ったが、ダメもとで地図にも載っている紀行食堂へ。
 紀行食堂は小高い丘の上、御前崎灯台のすぐ横にある。辺りには民宿や土産物屋、喫茶店などもあり。
 時刻は2時半近くになる頃だったが、他にもお客が居て普通に営業していた。座敷に上がり、「刺身定食」を注文。
 店内の壁にはTVの旅番組が取材に来た模様の写真。その横に注意書き。「刺身定食のお刺身は小盛にも出来ます。絶対に持ち帰らないでください。」…?
 実際に見て納得。普通に1パックの短冊で売られているぐらいの大きさのマグロを分厚く切ったもの、ブリ(カンパチぐらいか?)、タコ、それぞれの刺身がドカンと盛られている上、大きな子持ちの甘エビが2尾。更にマグロのあら煮の小鉢とみそ汁が付く。確かにこれはちょっと食べきれない人も居るかも。ちなみに値段は1575円(税込)なり。刺身はどれも新鮮で旨い。ここまで来た甲斐があると言うもの。
 光り輝く海を眺めながら、ひとときをのんびりと過ごす。この後はもう帰るだけだ。近場のインターから東名を一気、夕飯までには帰れる。
 高台にある灯台の周りは、海岸線よりも更に風が強く感じる。土産物屋の奥さんによれば、昨日も天気は良く暖かかったが、風はこれほど強くなかったとのこと。
 相変わらず雲一つ無い空だが、見通しはあまり良くない。普段なら東に伊豆半島の方が見渡せるとのことだが、ガスっていてほとんど見えなかった。海水の温度が高いから?
 強い風に吹かれながら歩き回っていても、まるで4月頃のように暖かな風は体を冷やすこともない。
 そういえば、静岡の今日の最高気温。なんと19度だそうだ。2月だぞ…?
写真・文 : 河村 敬

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