File56 旅路の「音」

「…道東の今日は晴れ。最高気温は19℃、暖かな日和となるでしょう…」
 10数年前、北海道のとあるキャンプ場の朝。テントを撤収しながら聞く、ラジオから流れる天気予報。
 35℃以上の最高気温が当たり前に思える灼熱の名古屋から、一人でやってきた8月の北海道。初めて訪れる北の大地、ちょっと大げさだろうか?と思いながら着てきたウインタージャケットも、雨が降って気温が下がると頼りなく感じるほど。そんなことも納得できる、小さなラジオの音。
 
 テントは人里離れた山の中にしか張らない、月明かりと虫の声、そしてたき火の炎があれば…なんてストイックな林道野宿派にはおそらく無縁の話でしょうが、バイクの旅にもある程度は音の出る機械を持っていきたい性分で。人気のないところで一晩過ごす時も、音楽でもあれば少しは気分も和らぐものだし、ラジオなら旅先でその地方のFM放送を聞くのも楽しいものです。
 元々は初心者の頃、ツーリングの荷物に何を用意すれば良いのかよくわからず、子供の頃のキャンプの荷物を思い浮かべながら、「旅先でニュースや天気予報がわかる」とラジオを持つようになったのがきっかけでした。初めての一人旅、テント泊は不安もあり、バイクに乗って走り続ける高揚もおさまらず…そんな気持ちを和らげてくれたのがラジオから流れるFMの音楽でした。
 4輪で長距離を走るには、音楽は欠かせないアイテムです。バイクはどうでしょう?4輪よりははるかに周りの音がよく聞こえるので、そういうものや自分のバイクの排気音だけを楽しみながら走るというのも悪くないとは思いますが。高速道路など、単調な道ではカーコンポでもあれば…なんて考えることもあると思います。
 バイクにコンポといえば、GLなどの豪華なツアラーだけのものでしたが、最近のビグスクなどでは一般的になってきましたね。さすがにオフロードバイクでコンポなんて馬鹿な装備は考えませんけど、荷物を大きくせずに持ち歩ける範囲であれば音楽を携行するのも良いと思います。
 音楽を持ち歩くといえば、昔の主流はカセットテープでしたね。いちメーカーの商品名がそのまま機械の通称となってしまった代表的なものですが、90分とか長いテープを使えばある程度曲数も入れられるし、振動で音が飛んだりとかの心配も無い。ドライブ用とかに好きな曲を集めたテープを作る楽しみもありました。選曲がスピーディでないという欠点は、走行中ほとんど操作できないバイクには関係ないこと。カセットテープは意外と雑な扱いにも耐えられるので、バイクで持ち運ぶのにも悪くないです。
 コンポの無い車(安いトランポとかね)で音楽を聞くために、よくラジカセ持っていったりしますよね。バイクでもこんな小さなラジカセなら持ち運べます。小さくても、スピーカー付きならキャンプの時に便利。スピーカーでは移動中は聞けませんけどね。ヘッドフォン使えば大丈夫ですが。ただ、ラジカセはバーアンテナを伸ばさないとラジオは受信しないので、移動中にFMを聞くことは無理です。
 しかし、さすがに今はもうカセットの時代ではないですね。空テープはまだ一応売ってますけど、ミニコンポとかでもカセットデッキはオプションか、安いオールインワンのものにあるぐらい。昔は楽しかった選曲&編集の作業も面倒に感じてしまいますし…
 手軽に持ち出せることを重視するならCDプレーヤーですね。買ってきてそのまま再生OK。
 ただし長時間聞こうと思えば、何枚もCDを持ち歩く必要がある。複数枚入れるためのケースもあるので大きさはなんとかなるとしても、外で入れ替えることも問題です。剥きだしのディスクはほこりに弱いですから。地面に落としたりしたら一巻の終わりですよ。
 しかし、中にはこういうものも。このCDプレーヤーは、MP3とWMAという代表的な圧縮形式音楽ファイルの再生に対応しています。CDを一度パソコンに取り込み、CD−R(RWもOK)に書き込めば、700MBのメディア1枚で10枚以上のアルバムを入れられます。これももちろん録音する作業が必要なわけですが、カセットと比べれば手間は掛からないでしょう。
 アルバム1枚を1フォルダとすればアルバムごとに移動出来るので、CDチェンジャーのような使い方が可能だし、全部の曲でランダム再生をかけることも可能。圧縮しているので厳密に言うと音質は落ちているんでしょうが、ほとんど気になりませんね。本体にアルカリ単3x2本、長時間使用の時はサブバッテリーケースを付けてプラス2本。4本だと20時間ぐらい再生可能なので、よく使っても2,3日は大丈夫。切れてもコンビニなどで電池を買えば済むので、長期のツーリングでも対応出来ます。
 ただ、CDは少しの揺れでも音が飛ぶ。どうしても振動には弱いですね。圧縮ファイルの再生時は数秒間の先読みがあるので多少揺れに強いんですが、それでも気休め程度かと。12cmのディスクを回転させて再生しているので、どれだけ耐震構造にしてもある程度の音飛びは覚悟しなければなりません。
 あと、CDはやはりプレーヤーの大きさがネックですかね。ディスクのサイズ以下には小さくできないので、どう頑張ってもカセットプレーヤーより小さく出来ない。タンクバッグの中でもかなりかさばる存在となってます。
 じゃあ他のメディアでMP3等を持ち歩けば?それがいわゆる「メディアオーディオ」ってヤツですね。ハードディスクが入ったものもありますけど、そこまでは要らないような気がします。小さなmini SDカードでも1GBの時代ですからね。
 で、再生機は…さすがに専用機は持ってません。今時のメディアオーディオは、USBメモリぐらいの大きさで2GBとかの内蔵メモリ容量がありますから、ハードの持ち運びも持ち歩ける曲数の問題も、すべて解決してしまうんですが。電車通勤じゃないから滅多に使わない、なら高い金出してまで要らねーよってのが本音ですが、他のもの、手持ちの機械でも似たようなことは出来ます。
 だいたいのPDAにはメディアプレーヤーが入ってますから、ポータブルプレーヤーとして使うことも出来ます。ウチのシグマリももちろん。さすがにハンドヘルドPCタイプは変ですが。小さいメディアの意味無いですし。ポケットPCタイプなら違和感無いでしょう。
 ただ、音は良くないです。これははっきりわかるレベル。200MHzでMP3の再生も出来るんだから、多くを求めちゃいかんですけど。
 
 てな感じで…
 何を持って行くにしても、自分的にはラジオは外せない存在です。車でドライブの時もそうですけど、FMさえ聞ければ何とかなる。あとは…とにかく、手軽に持っていけるものがいいですよね。
 特に準備するって感覚もなく、いつも手にしているものは?
 お財布、鍵。そして携帯ですか。
 今の携帯はカメラだけじゃなく、音楽プレーヤーの機能が重視されてますね。カメラも今更デジカメ持ち歩かず、携帯でまかなってしまう人が多いですけど、メディアオーディオも携帯があるからいいや、って感じになりますかね。
 私のはPHSですが、音楽プレーヤーとしてもかなり定評のあるモデル。MP3やWMA(専用ソフトでATRAC3に変換)はもちろん、パソコンを使ってインターネットで購入した曲を転送して聞くことも出来ます。スピーカーで聞く音質も意外に良い。普段から外で作業(バイクの整備とか)する時のBGMにも使ってます。手持ちのmini SDが128MBしか無いので(購入時はカメラのメモリとしてしか考えてなかったので)、入ってもせいぜいアルバム2枚分程度ですけど、1GB…いや512MBでもあればかなり使えそうです。
 携帯では、FMが聞けるものもありますね。テレビが見れるものも?それは別に要らないんですけど。バッテリーの問題はありますが、手軽に持ち出す事を重視したら今はこれ以上の物は無いかもしれません。
 
 
 ちなみに…
 ツーリング、走行中に聞く音としては、こういうものもあります。タンデムコミュニケータ。後ろに誰か乗せてる時は、音楽より2人で会話を楽しみましょう。複数台でのツーリングなら、無線で他のライダーと、ってのもありますね。ま、旅の途中で聞く音も人それぞれです。
 
 いろいろ書いてしまいましたが、内容はあくまでも参考程度と考えてください。運転中の携帯電話使用のように明確に違反となっているわけではありませんが、集中を乱す要因となることには変わりませんから。決してこの記事でバイク運転中に音楽を聞くことを勧めているわけではありませんので…
写真・文 : 河村 敬

目次




100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!