第49話 蕎麦喰いに行くぜ

 Sがある計画をぶち上げた。

 「タンデムで高速道路を走ろうぜ。そんでもって新蕎麦喰おうぜ」

 ふむ、面白そうだ。

 実を言うと俺はほとんどタンデムの経験がない。オフロード車が多いと言うこともあるが、マスツーリングさえしないヤツなので・・・なかなか機会がなかったわけだ。少なくともタンデムの可能性があるとしたら、自分は乗せる側であるのは確かだろう。そんな中にあって、ベテランライダーであるSとであれば、交代しながらのタンデムランが可能というわけだ。
 しかしながら問題はバイク。俺もSもオフロードライダー。250ccクラスのバイクに乗っている。エレファントが整備工場入りして戻ってくる気配がないので、タンデム出来るバイクがない。一度はファンデューロ借りてくるか、などとも考えたが・・・

 しかしSの企画はおまけがあった。レンタルバイクを借りるという案だ。
 そしてツーリング当日。Sの家にはレンタルしてきたバイクがあった・・・



 ・・・って、おい!

 いやその、他のバイクを考えていたわけなんだけど、故障その他で借りることが出来ず。250や400借りるぐらいなら、ということでビッグスクーター。まあこれとて乗ったこと無いバイクの一つではあるんだけどね。



 しかもだ。そんじょそこらのスクーターとは訳が違う。
 これはなんとカワサキなのだ!

 男・カワサキ

 そう、これぞ男のバイク・・・って違うだろ。
 スズキとカワサキが相互提携していたころ、スズキのSkyWaveをOEM提供したもの、それがEPSILON。であるからして、中身はスカブそのものであり、あちこちにスズキの文字があるのである。



 では、まいろうか!

 最初は俺の運転でスタート。いきなりタンデムで初めてのビクスク、ふらふらとどうも決まらん。荷重のかけ方がわかるまで少し時間がかかったが、慣れてしまえば楽ちんそのもののオートマチック。
 残念ながら最近出たツインカム仕様ではないのでどうにも非力なのは隠せない。250ccではそんなもんだ。



 さあ、高速道路だ。
 近年高速の2人乗りが解禁になって、タンデム車両を多く見るようになった。そのほとんどが大型のツアラーで実に楽そうに走っている。ひとりでも結構いっぱいいっぱいの250cc、それも低出力のスクーター。2人乗りでどんなものか。



 がんばってみてもこんなもんだね・・・まあスピードで咎められることはほぼ無いでしょ。でも巡航速度そのものは十分に確保出来る。容易には追い越せないだけだ。



 小休止に入ったサービスエリア。最近とみに流行のビクスク、ここにもいた。ライダーは女の子だが、いろいろと弄られた車両だ。金がかかるという意味ではオフロード車などとは次元が違うなあと。



 実はこのEPSILONにも秘密の装備があった。CDオーディオが搭載されているのである。レンタルショップが趣味で付けたものだが、付いている物を活用しない手はない。サービスエリアの売店で買ったCDは夏川りみ。う〜む実にツーリングにぴったりだ・・・て本当か・・・まあ大音響で沖縄系をかけて走るオッサン2人乗りのスクーター。怪しいという意外になんという言葉がある。



 ここからSの運転でスタート。高速をタンデムシートに乗って走るなど考えたこともなかった。
 中央道でも有数の険しい区間、非力なスクーターは喘ぎながら登っていく。昨今の車もバイクも強力になったので、いまや忘れてしまった感覚だ。



 恵那山トンネルを越えれば秋の色が見え始めた信州に入る。



 大型のバイクが一気に抜き去っていった。バイクの醍醐味はこういうところにあるという見方も否定はしない。スピードの遅いオフロード車に乗っているとああいう走り方はしたくても出来ないのだけども。



 実に長く感じた高速道路を降りた。

 インター近くのコンビニ跡で関東から来たO氏と合流した。
 2人のりだけでなく、今回の本当の目的は蕎麦なのだ。新蕎麦を喰うために集まってみたわけさ。

 郊外の道を走るにはビクスクも良いモノだ。街を縦横に走るだけのバイクにしておくのは惜しい。



 そして今回の目的地、山県村へ。
 ここは蕎麦の村である。各民家がこぞって自慢の蕎麦を食べさせる。10月も後半になると、地物の新そば粉を使う時期になる。



 どこにしようか。何十軒もあるなかでどこを選ぶのか。バイクの機動力を活かして走り回る。



 まずは「からさわや」



 蕎麦は普通盛りではたいていの場合少ないと感じるもので、一枚追加してみたりする。しかし今日はせっかくの蕎麦集落、ハシゴで楽しもうということで軽く1枚。
 蕎麦を待つ間、雑誌の紹介記事で作戦を練る。蕎麦の太さが記載されたデータを見ながらどこが良いかと。



 やってきた蕎麦は盛り。ぺろりと平らげそば湯をいただく。

 うむ、旨い。



 さて、2軒目はどこにしようか。



 もちろんお茶はそば茶である。セルフサービスで好きなだけ。



 ここではサイドメニューも頼んでみた。信州ならやはり馬、だろうて。厚い馬刺しと馬のホルモン煮付けを。



 今度の蕎麦はやや平たい印象。味は甲乙付けがたい。



 そしてまたそば湯を。蕎麦をゆでるときのゆで汁で、蕎麦のうまみがとけ込んでいる。ネットリと濃い色のそば湯を2杯、3杯と。
 まだまだ喰える・・・が、時間がそろそろ気になる。秋の日は短く、帰る頃には暗くなってしまうだろう。



 さて、こんなところでお開きにするかとスクーターにまたがる。バイザーツキのメットがオフロードライダーを主張する二人乗り。



 関東へ帰るO氏とは塩尻で別れた。またの企画で合いましょう。



 バイク屋にたどり着いたのは閉店直前。途中渋滞でどうなるかと思ったがなんとか間に合った。
 1日楽しく走ってきたEPSILONとはここでさようなら。二度と乗ることはないと思うが・・・

 まあ、こういうのも有りかな。

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