翌朝、霧は晴れなかった。
濃霧の納沙布、何も見えるはずがない。それでも行くのかと聞かれれば。
バイクで行くことに意味がある。
ただそれだけだ。
岬は、ものものしい雰囲気に包まれていた。あたかもとりまく霧がその所為であるように・・・
昨日早朝、北方領土の貝殻島付近において、根室漁港所属のカニ取り漁船がロシアに拿捕され、銃撃を受けて死者が出るという事件があったばかりだった。
まったく知らなかった。テレビすら見ていなかった。そういえば携帯のiチャンネルでそのような文字を見たかも知れないが、軽く見流していた。
「納沙布岬」の標識はいくつかあるが、各テレビ局がそれぞれに位置してレポートを流している。
そんな中のひとつにバイクを近づけて写真を撮る・・・平和ボケしたヤツなのか、俺は・・・
霧笛が響く灯台から海を眺めるも、北方領土はおろか先の岩さえ見えない。
風景だけなら、北方領土の資料館なら、また平和なときに来ればいい。今日はもうこれでいい。
XT250Xに「さあ、帰ろうか!」と声を掛けた。
予定していた霧多布は霧が多すぎるので取りやめた。そこにある林道も今日はあきらめた。
ヒマワリもこの天気ではいささか元気がなさそうに見える。
厚岸でちょっと早めの昼飯にと、駅前の食堂に入る。
牡蠣ののれんがかかっていたためで、あとで有名店とわかったもののそんな気もなく入ったが。
やはり、牡蠣を食わねばね。
夏の生牡蠣っていいのかしら・・・と思いながらもレモン汁で。俺はポン酢が欲しい。かきラーメンが名物らしく、それも。牡蠣三昧、いや2品なので牡蠣二味か・・・
十勝川で一気に空が晴れ上がった。
湿気で曇ったα7Degitalを渇かし、PLフィルターを取り付ける。
コントラストを利かせて、夏の一枚。
それが最後になった。帯広の街はすぐそこだった。
結局、ホクレンの旗は、入手できなかった・・・
3日間で走った距離は1068km。168kmのオーバーで5000円ほどの追加。十分に楽しませてもらったXTを返却した。
家にたどり着くまでがツーリング。しかし俺のツーリングはこれで終わり。
帯広だからね。六花亭本店はやはりね。
みかんプリンを片手に、特急とかち号は帯広駅を離れた。また来たい。道東侮りがたし・・・
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