林道を求めて伊豆へ行くということ

 ダートの林道がまだまだ自由に走れたころはそんなに昔のことではない。
 富士山周辺が侵入禁止になったのは十数年前、それまでは5合目まで林道で行けた。クリスタルラインが一気に舗装されたのもそのころか。それまでは100km以上のダートを走ることなど難しくなかった。スーパー林道も今ではほとんど舗装となっているが・・・などなど。

 同様に林道が集中しているエリアとして、伊豆の山中が上げられる。
 そしてその伊豆も、今ではほとんど走れなくなってしまった。進入禁止措置が著名な林道で軒並み行われている。かつての林道王国は、今では壊滅状態となった。



 そんな伊豆は、温暖なため関東からの冬のツーリング先として各雑誌が採り上げる。バカの一つ覚え、と口の悪い連中は罵る。まったくもってその通りではあるが、奴らもなんらかのネタを書いて行かなければならんのだからしょうがないとも。安全に走れるところでもあり、伊豆自体は悪くない。

 伊豆も西から攻めるとなるとちょっとそれらの雑誌とは違うことになる。

 東海岸は、シーズン中は通ることさえ厭になるほどに混雑するが、本格シーズン前でもあるこの季節の西海岸は閑散としている。伊豆を貫くスカイラインをあえて外し、海岸線に沿えば夕陽の丘や旅人岬と名を付けて人を誘う姿はやはり伊豆のそれではあるのだが。



 ほとんど閉鎖になったとは言え、まだ走れる林道はある。
 著名な林道からすると短くも物足りないモノであることは確かだが。



 そこに山がある限り、入るべき道は造られていく可能性がある。
 今は通れない道も、やがて通れる様になる。それがまたやがて進入禁止になるのかは知らない。

 こうした林道を見つけることは走って探すというどこでも同じ行為をこの伊豆でも行うわけだが、先人の足跡を追う意味では伊豆は足跡が多いので比較的楽をすることが出来る。



 雨の合間の日曜日。林道脇を流れる川は水量が多く流れが急になっている。
 天候は比較的安定しているエリアであるが、これからの梅雨の季節は用心するに越したことが無かろう。



 伊豆は半島であり、突起状に海に張り出しているのだから遠くを遮るモノがない。高いところまで上がる林道では晴れていれば景色も楽しめるのだが。
 かつてのような林道王国ならまだしも、今の状況であればそうした余裕を持ってもいい。



 林道出てから10分で温泉という立地はなかなか捨てがたい。温泉の多い伊豆、小さな立ち寄り湯を見つけて静かに楽しむのも乙。



 土肥港からはフェリーも運航されている。今は清水港までを結んでいる。
 フェリーというと海を渡らなければ行けないところへ行くための手段と思われるが、ショートカットとしての手法も捨てがたい。



 そしてフェリーの人となる。土肥の港が離れていく。さよなら、伊豆。



 甲板では「焼きさざえ」ののれんがかかるがその実は「アカニシガイ」であった。しかもゆでたモノを炙っただけ。
 伊豆でもう少し時間があれば魚を食べて来るのだけどね。



 富士山が霞の向こうに頭だけ出している。清水港では潜水艦が海の向こうに頭だけ出している。
 フェリーの着港が近づいた。そろそろ帰る準備としようか・・・

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