File59 倒立サスペンション

 フロントサスペンションは正立か倒立か。

 テレスコピック方式(いわゆる普通の)フロントサスペンションは、インナーチューブとアウターチューブが摺動して伸縮します。正立と呼んでいるのはインナーが上向き、倒立(アップサイドダウン)とはインナーが下向きになるものをそう呼びます。
 どちらが良い、というのは諸説ありますが、現在レース車両はほとんど倒立となりました。公道用の車両においては一時成立回帰した時期がありましたが、レーシーな車両は今また倒立になりつつあります。現在新車で買える公道用オフロード車両では、XRとKLXが倒立を採用していますね。  それとは別に、ジェベル、セローなどは正立を採用しています。これは、成立の方が倒立よりマイルドであるからと言われます。重く太いアウターチューブをクランプしている倒立は、正立に比べて剛性が出やすいことがその要因のひとつ。



 ジェベルXCと基本を同一にするDR250R(SJ45)は現在販売されていませんが、正立です。先代となるDR250S(SJ44)では倒立を採用しており、先述の「正立回帰」の時期に販売されたものです。当時はモトクロスレーサーのRMシリーズも正立を採用しました。但しそれはスズキだけであり、正立の期間が96〜98年であってまた弱かった時期ですから採用の正否はなんとも・・・

 そんな正立時代の車両、DR250Rに倒立サスペンションを取り付けてみたいと思います。

 DR250S、RMX250Sも倒立を採用していましたが、DR250Sはフロントホイールの規格が異なります。RMX250Sのものを取り付けるのが定番ですが、基本の車体が同じレーサーのRM系のものを使うことにしました。
 RMの倒立は年式によって様々なチューブ径のものがあります。カヤバ時代はφ41、ショーワになってφ45、正立時代をはさんでφ49、現在はφ47の様です。
 今回取り付けたものは、95年式のRM125、インナー径φ45のショーワ製です。オークションより入手しました。



 倒立になるとアウターチューブをクランプするわけですから、3ツ又ももちろん換える必要があります。RM系ならばDR系と同じステム規格ですので、セットで交換します。



 RMX250SやDR250R以降の車両は、フロントホイールのシャフト規格が同じです。ベアリング内径(シャフト径)17mmで、ハブの長さも同じ様です。
 ホイールおよびアクスルシャフトはDR250R用がそのまま使えますし、メーターギヤも同様に取り付けできます。
 DR250S用はこれが15mmになるので流用が利きません。

 ブレーキキャリパはこの時期にモデルが切り替わっているのでDR250Rのものは取り付け不可能で、RM用(DR250S、RMX250Sも同じ様子)を使います。ピストン径は同じなので制動に問題はありません。



 まずは現状のサスペンションを取り外さなければいけません。フロント周りには電機系の配線が多いですから後で困らないように記録しておきましょう。線は色分けされていますから最近は写真で見ることが多い。
 フェンダーも流用します。モトクロスにもフェンダーは必要ですから取り付け穴は当然開いていますから。



 ステムシャフトをはずそうと思ったら、2面幅32mmのナットでした。モンキーでは300mm以上のものが必要ですが、頭が大きすぎてこれでは回せません。
 頭の小さいものが必要なので、めがねレンチが良いでしょう。片口でも結構な値段がします・・・ソケットにすればよかった、と後で気づきました・・・が買わないと進まないので仕方なく。



 これで完全にフロント周りが外れました。レンチ購入の時間を省けば1時間もかかりません。
 間髪入れず取り付けにかかります。



 まずは3ツ又の取り付け。ベアリングにグリスを塗ることを忘れずに。ベアリングナットは重すぎず軽すぎずの手感で締め、アッパーブラケットで押さえての固定です。フォークを入れるまでは仮締めで、ひねり調整できるようにします。



 続いてフォークを入れます。左右の突き出しは合わせる必要有ります。
 DR250Rの正立は端面キャップ〜シャフト間が905mm、RM125は940mmあります。35mm長いものを取り付けては姿勢が崩れますから突き出しを多くして対応します。
 アッパーブラケットがDRにくらべて10mmほど厚いので、25mm突き出せばほぼノーマルと同じにはなります。

 しかし、RMのサスペンションはDRに比べて硬いので1Gでの沈みが少ない。またDR250Rの特性からやや曲がりにくいのでフロントに傾けたい(キャスターを立てたい)。
 その対応は、リヤを上げることで行うことになりました。リヤのサグを高くすることで姿勢を矯正しようというものです。

 換装前の時点では、フロントを15mm突き出して、リヤサグは90mmでした。これはやや低めです。それを、リヤサグ65mmまで締め上げて姿勢を前下がりに修正しました。



 いちばん苦労したのは、何を隠そうこのウインカーステーです。
 クランプのネジの方向が変わってしまったためで、純正のステーをぐにゃぐにゃに曲げて対応。2度と同じものは作れません・・・



 さて、シェイクダウンテスト。
 近所のダートを走って状態を見ます。

 直線路では、剛性の増加が良い方向に働き、ギャップ通過などに安定感が出ました。
 しかしながら、タイトなターンにおいて、フロントから逃げる傾向が現れました。

 その後、巻頭の取材時にも、林道で度々フロントから流れる症状が出てしまい、ペースを上げることが出来ません。
 これは、フロントの硬さに問題があると考え、今後モディファイを施すことにしています。

目次




100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!