灼熱の太陽の下

 社会人にとって、バイクに乗れる長い休みは夏休みぐらいのもんだろう。
 だから例年この時期になると、東へ西へ、あるいは北へ南へと計画を巡らせるものだが。

 昨年の夏はまだ元気だったツーリングバイクが、今年はどうもよろしくない。寄る年波には勝てず、といったところだろう。もちろんそれは人間にも言えることでね・・・じゃあ小さいバイクでツーリングするか、と言われれば、そんなシンドイこと出来ん!ということになるのさ。
 勢い今年の夏はエアコン効いた車でのんびり走るかあ、という方向に落ち着く。

 しかしながら、少しはバイクで走るのも悪くない。


 朝起きてみたら、雨が降っていた。

 これでは行けない、と二度寝することに。夏の暑さに参っている頃だけに、睡眠取るのも悪くない。
 ゴソゴソと起きあがって新聞など読んでいたら、携帯が鳴る。

「今どこにいます?」
「家・・・」

 そう、雨は完全に上がっていた。集合地点ではまったく降ってもいなかった様だ。今から来るかと問われればそれも良いかとなる。食料入手のために寄るコンビニで落ち合うことにして。
 朝早く起きたのは、先日少し長距離仕様でギヤ比を上げていたのでそれを戻すつもりだったが、そんな時間はもはや無かった。

 いつものメンバーが待っていた。
 皆一様に「暑い」を口にしながら。



 林道での走行順はたいてい決まってきている。あまり速くない、それ以上に後に付かれるのが苦手な自分はいつも後方に位置する。
 青空の下、軽快に林道を走り抜ける。それぞれのペースで良いじゃないか。



 この地域の林道は久々だが、滑りにくくて走りよい。多少荒れたところもあるが、足回りのリセッティングで本来の柔らかな走りを取り戻したDRはこういう路面を好む。

 好調だ。あるひとつの問題を除いては・・・



 実は、キャブに問題があった。
 パワーアップを狙って、大きな口径を持つキャブが取り付けてあった。セッティングに多くの時間を費やしたことでかなり良くなっていたのだが、これまでで一番暑い、晴れ上がった今日、標高が上がるにつれて回転が上がらなくなってきた。
 回転は上がらずともギヤを上げていくことで十分走って行くほど力は出ているのでここまでのところはたいした問題もなく来ていたのだが。



 この路面を見て少し考えた。
 降りることは何の問題もない。ただ、上れるか、だ。

 タイヤはまだまだ新しく、軽くて足つきの良いバイク。普段の調子なら行けるだろう。しかしアイドリング+程度しか回らない現状ではちょっと難しくないか。そこへ持って、今朝の時間がなくなってローギヤード化も出来ずに来ていた。止めといた方が・・・

 降りていく仲間を待つことにする。どうせ行き止まりは判っている。

 待つ間にキャブを外してニードルクリップ調整を試みるが、2.5mmの六角レンチを忘れた・・・何も出来ずに戻すのみ。



 木陰で待つ。日を遮ればそんなに暑くないものだ。
 熱せられていない涼しい風も吹き抜ける。これが木と土の力。

 なんだか下の方から、苦しげなエンジン音が聞こえてくる。行かなくて良かった様で・・・



 暑さには木の力も効くが、やっぱり最後は水の力、かな。

 夏休みのバイクは今日だけで良いと・・・家に帰ってエアコンの効いた車で温泉へ汗を流しに行く、そんな、今年の夏。

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