第42話 だから、でも
だから、忙しいんだってばさ・・・
春から中部地区は活況である。それが収入に直接はねかえるわけではないのだが。
土日も昼夜もなく職場に幽閉される毎日。ゆっくり考える時間もなにもないままに、残りの時間だけが少なくなっていく。
そしてそれは、キャンプの準備時間が徐々になくなっていくことでもあった・・・
何かとせちがらくなってきた今日このごろ。なんとなく、みんなが集まる会に出席しないことが悪いことであるように思われるといった違和感さえ感じ始め・・・
だから、時間がないことも手伝って、「たぶん行かない」という発言さえしていたものだ。
そうした事情は悪友Sも同じで、行けなかったときはああしてこうして・・・などと相談していたものだが。
なんとか翌日曜日が休めるようになった土曜日の午後7時。
我が巡洋艦は春先に壊したクラッチの修理も出来ぬまま。導入したばかりの支援戦闘機は姿勢変化で役にたっていないヘッドライトや林道下りに特化したギヤ比が高速での移動を拒む。時間が時間であるだけに、県内とは言えど夜の高速道路が必要不可欠。
今からテントや寝袋も積めないしな・・・
もう車で行くしか選択枝がないわけ。ロールマットと大きな封筒型シュラフ、調理機器をラゲッジに放り込んで。
高速道路へ乗れば少々速めの速度で流れる景色。あっと言う間・・・ではないものの、松阪インターを降りたころ、携帯が鳴る。
Sである。
「松阪インター降りてどちらへ行くんでしたっけ?」
奴も来ているようだ。あるいはどこかで追い越してきたか。途中のスーパーマーケットで買い出し落ち合いとすることに。
先に着いたのでメニューを考えていろいろと物色。網でも買うか・・・
Sと合流して現地へ向かった。
今年は、参加者が少なかった・・・ように見えた。バイクの数は例年より少ない。
名物の著名人、K氏が今年は来られない。また某誌の名物企画も今回は、無い。
それでも遠くから来ている人たちは変わらない。九州とか・・・
普通の週末に遠方から来る人たち。そして近隣の在住ながら、車で来た俺たち・・・
いいかげん出来上がっている面々の中では、なかなか入り込めなかった俺。知った顔ばかりなのに。
もちろん、車のラゲッジで寝た。これはキャンプでは無いか。
朝になり仕事のあるSは帰って行った。
晴れれば帰ってバイクに乗ろうか、などと考えていたけど雨模様だ。最後までいることにした。
毎年朝になると。K氏が焚き火でゴミを燃やしている。今年は俺がその代わり・・・というのはなんだが・・・をやってみた。ゴミを集めて焚き火に放り込む。火を落とさないように注意しながら。
恒例の行事が行われ、集合写真の撮影も。林立するカメラのほとんどがデジタル。数年前はせいぜい2〜3個がいいところで、ホームページのためにデジタルを使用するなど異端であったのに時代は変わった。
でも、変わらないもの。それが参加者。新しい人も増えてはいるが、昔からの仲間の集まりという性格がやはり強い。みんな旧友に会いに来る、という感じなのか。仲間意識・・・このところ少々ひっかかる言葉だが・・・
徐々に参加者が帰りはじめた。最後までいるつもりだったが、あまりに腰が重くなった連中を尻目に、車を発進させた。雨が降り始めていた・・・
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