第二十一回 HONDA XR400モタード
最近、スーパーモタードモデルが流行です。
オフロードバイクにロードタイヤを履かせたもの、と言ったところですが、海外では結構昔からあります。古くはスーパーバイカーズなどもそのルーツなのかなと思えます。
近年のブームも、日本では輸入車であるフサベルやハスクバーナが先鞭を付けたもので、日本製はカワサキのD−TRACKERが先鋒となりました。ここへ来てスズキがDR−Z400のモタードモデルを出して真打ち登場、という感がありますが、ホンダもついに重い腰を上げました。
昨年のXR250を皮切りに、今年に入ってXR100(本来のXRというよりApeがベース?)らとともに、XR400のモタードモデルも登場しました。
オフロード用のXR400は国内での発売はされず、逆輸入により目にする程度でしたが、モタードモデルは国内向けとして販売されることになりました。
デザインは最近のホンダ製オフロード車の流れです。
車体はオフロード車そのものと思われます。これがオフ用のXR400と同じものかどうかは詳しく判りません。
エンジンはセル付きのSOHCです。表示がありませんがRFVCだと思われます。
400ccの排気量ですが、馬力は抑えられた30馬力。使いやすさを重視した、とはメーカーの言葉です。
今、400ccのエンジンはどれぐらいの馬力があるのか?
たとえば400ccのオフロード車DR−Zの場合は40馬力を公称しています。2st車の置き換えとして作られた車両ですから同等の出力を持っているわけです。このクラスの主流となる輸入車では42〜46馬力と言ったところでしょう。以前の400ccオフ車としてはXT400アルテシアが31馬力、これはこのXR400と同等ですね。
この時勢に30馬力を公称したこのエンジン。30馬力という数字は250ccクラスの数字と同等になります。トルクは排気量分の余裕があると見て良いでしょう。
タイヤはもちろんロードタイヤで、17インチのタイヤを履きます。
フロントは倒立サスを採用、NISSINの片押し2ポッドブレーキキャリパを採用します。
アフターメーカーのモタードパーツは、主に4ポッドや6ポッドの強力なキャリパを大径のローターに合わせてブレーキ力を強化していますが、メーカー製ではそうはいかないのでしょうか。
メーター周りはシンプルなものです。以前のXR250はデジタルメータなども装備していましたが、コストダウンからかアナログのメーターに。
トップブリッジ後方にオイルタンクがありますから、ドライサンプのエンジンです。
今回は鈴鹿サーキットのドライビングスクールで開催された試乗会にて、乗ってきました。
試乗会の最大目的であったため、回数多く乗ってみました。
車体はオフ車ですから、普段オフに乗っている人には違和感ないでしょう。足つきはタイヤの分だけか、低くなっているようです。ただし、やや重く感じます。
エンジンは振動が少ないのが良いですが、アクセルレスポンスは400ccと考えた場合、やや劣るかなと思われます。
馬力の数字はどうであれ、出力特性が良ければそれで良いのです。
その特性、これはどうでしょうか。
モタード化されているので、フロントタイヤが主導してよく曲がる印象です。路面のグリップがよいコースですから、いろいろとやってみました。かなり寝かし込んでみたりクイックに方向を変えてみたり。
これが公道ではどうでしょう。路面に砂が浮いていたら?
オフロードタイヤを履いた高出力車の場合、アクセルを開けてリヤを流したり、フロントの負荷を軽減させることで安全を確保します。フロント主導ではいざというときに怖い。
そうした走り方を試してみたいのですが・・・
このエンジンは、そうした意図には反応してくれません。レスポンスが悪いのと、トルクが不足しています。絶対的な力不足と思います。
250ccのXRモタードは定価57万円程度、400ccのDR−Zモタードは73万円程度します。
このXR400モタードは、定価で63万円程度。DR−Zよりかなり安く設定されています。出力差、装備の差など考えると妥当な価格とは言えます。
この手の車両を買うのに、コストだけで買うでしょうか?車検がある車両なのです。
わずか2馬力差のXR250は車検がありません。またあのエンジンは定評があります。
排気量の差は確かにあるでしょう。しかし私は400cc31馬力のアルテシアから250cc31馬力のDR−Rに乗り換えた経験がありますが、高速道路以外では250ccの方がよりよい力を感じました。実際には排気量だけで力の差は感じさせないのではないでしょうか。
XR400においては、早急にエンジンの見直しを行って欲しいと思ってしまいます。
また、ブレーキの弱さも弱点になります。タイヤのハイグリップ化にブレーキが負けています。
正直なところ、輸入車の400ccクラスと比較出来るレベルにはほど遠い。値段が半分程度ですから仕方ない、というところですが、モタードをスタイルだけで乗るのならこれでもよいでしょうが、モタードならではの走りを・・・というのなら、選択しにくいかな、と感じてしまいました。
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