第39話 冒険者と幸運な探検家

 ある日のこと。新聞を見ていたら、スポーツ欄の片隅に報道があった。

 「パリダカ3勝のサンクが事故死」

 リシャール・サンク。KTMのエースライダーで、新聞にもあるように、Dakarラリーをはじめとしたラリーレイドで活躍していた。
 事故は9月30日、ファラオラリーでのこと。その日2度目の激突事故を起こしたサンクは、2ヘリコプターで搬送される間に息を引き取った。

 その日2度目の激突事故・・・

 1度目がどのような事故であったのか情報が無い。ただ、2度目があったということは、1度目の事故のあと走り続けたということになる。
 以前から海外ラリーでは、このように事故・・・クラッシュに置き換えよう・・・を起こしても走り続ける例が多くあった。
 走らなければ逆に生き延びられない場合もあるだろう。しかし、その多くはリタイヤしないために走る、ということだと思う。それは競技であるから。競争であるから。リタイヤ=負けであるから。


 俺たちには走り続ける理由があるだろうか?


 山の中でクラッシュし、動けなくなって助けを呼ぶ・・・いや、呼ぶ手段がない。これはどうしてもなんとかして連絡の付くところまでは行く必要がある。そんな場合が考えられるだろう。
 別に砂漠でなくても、町から少し離れただけの所であってもそういうことはあるものだ。

 だから、他人ごとではない。

 逆に、助けを呼べる状況なら素直に呼ぶべきだ、無理をしなくてもなんとかなる範囲なら無理はしてはいけない、ということも今回の件から言えることでは。


 サンクの駆ったKTM、市販モデルには「ADVENTURE = 冒険者」とある。
 ちなみに俺のバイクには「LUCKY EXPLORER = 幸運な探検家」とある。

 冒険と探検。

 似た言葉だが、ちょっと違う様だ。
 冒険 : 危険を伴うことをあえてすること。
 探検 : 未知の地域に入り踏査すること。
とか。(出典:三省堂大辞林 第二版)

 それがどうした、と言われても答えられないが。とりあえず俺たちは「冒険」はしなくても良い。「Adventure」とあっても心は「Traveller = 旅行者」で良いな、と。
 でも「探検」したくなる。危険を伴わない範囲で。だから「Explorer」の心は失いたくないかな・・・

 たとえそれが「幸運」なだけでも、ね。

目次




100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!