2月のある晴れた朝。

1台のバイクと共に碓氷峠を駆け上がっていく。

すでに無料化されたバイパスには、

多方面からなるトラックが絶えることなく走る。

そんな隙間を申し訳ないほどの速度で走る。

峠のピークは群馬と長野の県境。

そこを越えると、今回の旅の目的が見えてくる。


緩やかな曲線を描き、澄んだ空に映える。

雪を被った標高2568mの浅間山。

今の季節が、1年で最も美しいとされる。

しかしここは現在も活火山のひとつ。

『美しいものには刺がある』とは

正にこの通りである、と感じる。

遠くに近くに浅間山を見ながら、今日の旅が始まる。


1年を通じた観光地、軽井沢。

浅間山は軽井沢と北軽井沢一帯に広がる。

今はスキー場が賑やかな季節。

鬼押し出しへと向かう有料道路は

冬タイヤ装備じゃないと入ることも出来ない。

その為にわざわざバイク用を探し、

通行料金を払って進んでいく。

長い直線路の周囲には何も無い。

普段見えるはずのものが無い、

ただそれだけのことだが、とても新鮮に見える。


風の流れで山から噴出する硫黄がガスが

風に混じって麓にまで降りて来ている。

やや曇り始めた浅間山周辺、

かなり近づいてきている事を感じる。

過去、浅間山の噴火によって出来た溶岩群、

通称「鬼押し出し」が見えてくる。

いくつもの奇岩が寄りそう姿が

その名称の由来を感じさせる。

雪に埋もれた姿とその奥に見える浅間山の

絶妙なバランスがさらに自分の興味を引く。


鬼押し出しから別れ、県道を伝って

北軽井沢の奥へと進む。

交通量など皆無に等しい道路には

除雪も少なく、積もり積もった雪道が広がる。

そんな静かな冬の森を静かに走りぬける。

浅間山の姿は次第に小さくなっていく。

森の広さに隠れてしまい、

後方には不穏な曇り空と樹林、

1つの長い長い直線路しか見ることが出来ない。

そこで、もう少し高い場所から望める場所へと向かう。


樹林帯から伸びる峠道。

嬬恋から倉渕へと繋ぐ二度上峠。

峠へと上がると曇り空の中に浅間山の姿。

小雪が降り始め、次第に姿を隠そうとしている。

雪化粧のお色直し、と言ったところだろうか。

晴れればその姿を見ることが出来るから、

気紛れな冬の天気も、今日は許してやろうじゃないか。

文・写真 : 山本賢史

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