The 10th TOUR de FUKUI

 誰だよ、行いの悪いヤツは・・・

 このところ続いた秋晴れの天気は、土曜日の夕方から雨が降り出すという気象の変化で一変した。もともと当日朝から冠林道(未開通区間の国道連結林道)を越えて現地入りするつもりだったが、雨ではそうしたルートが使いにくい。
 それにも増して、雨の中でロールマップを巻くのは至難の業でそのための屋根が欲しい、という意図もあって。

 レンタカーでワンボックス車を借りる。いつもの車を会社の駐車場に置き去りにし、会社の近くで借りてきた。行き先は、福井・・・


 9月のある日。一通の封筒が届いた。差出人はThirdEyes。ツールド福井の主催をしているバイク屋からだ。


 昨年計画された「第10回TOUR de FUKUI」は、諸般の理由で延期になった。
 1年のブランクを経て今年それは蘇った。



 昨夜遅くまで仕事をして、早朝の道をレンタカーが走る。
 自宅を出るときには少降っていた雨は、ここ福井では影響はまだ出ていない。ここに来るまでの間、知った道なのに3回のミスコースをしているのは、CCRに出る日の朝としては如何なものか。

 予定を10分ほど回り込んだが、いつもの志津原キャンプ場にたどり着く。そそくさとバイクをおろし、身支度して車検へ。



 今回の車検、若干不安点があったのだが。
 経時変化で割れてしまったリヤブレーキのスイッチが、強く踏まないと点かないことだ。

 車検自体は目視で行われたようで、受付を終えた頃には全て終わっていた。
 車両規定は年々緩やかになっている様な気がする。基本的にマフラーさえ換えなければ問題ないようだ。フサベルの豪快な排気音はしかしメーカー出荷状態と同じであるのでそれで問題ない。



 ブリーフィング・・・ライダースミーティングでは、雨にたたられた前回のような変更はなかった。当日朝からの参加である私はここでコマ図を巻くことに没頭するが、音を嫌って手巻きで巻き上げたロールはせっかくの逆転機構付き電動ロールマップも宝の持ち腐れだ。



 初めて参加した第8回。外車は私のフサベルとBMWぐらいだった。
 ところが今年、オフィシャルを含めてKTMが数台、それもラインナップにある各排気量の車両がほぼ全部集まった勘定だ。それだけでなく、フサベルも私以外にもう一台・・・

 大型車が増えたのは第9回からだ。今回もDR−BIGなど大型車が出走するが、なかでもアプリリア・トゥアレグなどはなかなか見掛けることのないレアな車両だ。アフリカツインのライダーは女性。



 来賓の議員が振り下ろす日章旗を合図に先頭の車両がスタートを切った。
 件のアフリカツインもサポートの仲間に見送られてスタートしていった。

 台数が少なかった今回、100台のキャパに対して半分以下の参加者で、コースマーシャルは7台置きに走行する。万全の体制を取っている。

 心配された天候は、私のスタートする頃には日が差してきた。良かった、行いが悪いのはオレじゃない。
 今回、申し込みの際に「最後尾スタート希望」として申請していた。そのためゼッケンは40番。



 走っている内に気付いた。このルートは第8回で使われたルートだ。
 第8回。私にとって初参加となったその日は、ホイールナットを落としてしまうという、今に語り継がれる(今年もCPでそんな話を聞いてます。。。)事件が記憶に蘇る。



 この場所に停めて、ナットの抜け落ちたアクスルシャフトに対策を施していたあの日。
 今年はナットは落とさない・・・というか、これだけ錆び付いていれば落ちることはあり得ないだろうか・・・

 整備したことで閉め忘れたナット。今は整備しないことで錆び付いている。



 前半はがんばって走った。
 無理を言って遅くしてもらったスタート順。それは自分の「遅さ」が原因だ。後ろから迫られることが特に苦手だ。コーナーでバイクをコントロールするウデの無い自分の走り方は徹底したスローイン・ファーストアウトで、フサベルの制動力と馬力にものを言わせた走行だ。減速のたび真後ろに着かれ、加速で引き離すにしてもそれはまた追いつかれるために引き離しているようなものだ。単独で走っている場合や後追いをしている場合にはそれほど差は付いていないのだが、後ろから来る相手にはとことん弱い。
 後ろから来るバイクはほとんど居ないはずだ。いても2,3台でしかない。そんな状況が自分には一番楽しく走れる時だ。

 今回は比較的平易な林道が使われていた。大きく移動することはなく、勝山・大野といった近隣を回るコース取り・・・スタート前のブリーフィングで議員先生がエリアをばらしてしまったのはご愛敬・・・だった。
 唯一難所と言える林道では、白象(匿名希望)が一頭、折れたブレーキレバーの交換中であった。たまたま通りがかった別の象のライダーが持っていた予備品で事なきを得たところだ。こうして助け合って行くところがこのイベントだ。その精神は、以前のツールドのパンフに記された谷口代表のパリダカ参戦記に通じるものがある。



 法恩寺山、スキージャム勝山のゲレンデから平野を見下ろす。
 もうしばらくすると紅葉が始まり、やがて雪に覆われる季節がやってくる。北国ではバイクにとって一番いい季節である秋は短い。



 CP3のケータリングサービスは、いつもと変わらぬおにぎりと豚汁。
 おにぎりの具の選定はセンスがものを言う(大げさ)。梅干しは定番中の定番で外せないが、相方に何を持ってくるかだ。大勢は昆布となるところ、ここでは確か毎回鰹になるようだ。ちなみにしぐれの文化圏である私の地域では「あさりしぐれ」のランクが高い。

 ここまで最後尾付近を走ってきたが、休憩の長くなった半数以上の参加者より先に出発することに。スタートを遅くしてもらった意味がなくなってしまうが、この辺りまで来ると皆大人しくなり無用に飛ばすことが無くなるのもいつものこと。



 変わってしまったものもある。
 CP4が置かれた林道は、前回使用されたときにはダートであった。

 ツールド福井で使われている林道は、砂利が多い、と感じる。

 砂利の林道はすなわち、より人の手が入っているということだ。中部関西に置いては、その手の林道はやがて舗装化されてしまうものである。私の苦手とする砂利道(というか、砂利が好きだという人が居たら走り方を教えて欲しい)が減って走りやすくなったが、走れる未舗装路はその分減っていった。ここでもそういうことになってしまわないか。
 前回のエリア付近にあった越前西部林道が徐々にダートの区間を減らし、絶滅する日がすぐそこに迫っている。「ツールド福井」は福井をツーリングする企画である、と言ってみても、ダートがなくなってしまったらその魅力は保てるだろうか。



 わりあいコンパクトにまとまった今回のエリア。最終のCP5を過ぎても、まだお帰りモードには突入しない。
 最後に待っていた難所、それは道のことではなく、CCRの本質であるルートファインディングの醍醐味を意図したものだった。

 CAP走行(コンパスを利用し、北を0度としてコマ図に記載された角度に向かって走るもの)を連続させてルートの見極めを競う区間が待ち受けていた。
 ここの指定は330度で左折するのが正解だが、次のコマの40度方向には道がない。しばらくここで難解なCAPの見極めに頭を捻る。

 結果、直前のコマのポイントが違っていたのだと判明。短い間隔でいくつも曲がり角のある(要は田圃)場所をポイントに選んだ作成者の罠にまんまと填っていたわけだ。正確な光学式ロータリーエンコーダによるデジタルメータを装備し、距離補正も完璧に合っていた我が車でも10m単位で連続する道を見極めるのは簡単にいかなかったということだ。



 2001年6月24日は第9回ツールド福井が開催された日だ。
 その日、沿線を走る京福電鉄(当時)において、電車同士の衝突事故が起こった。半年間で2度目の衝突事故だった。

 時は流れて、「えちぜん鉄道」が生まれ、新しい体制で立てなおすことになったのが今年。
 そして、そのえちぜん鉄道が全線開通するのは、第10回ツールド福井の翌週、10月19日になる。



 自分の乗り方は、最初から滑ることを前提にアクセルで後ろを流していく様にすることが多い。それはしかし、体力のあるときには可能だが疲れてくるとそうそううまくいかなくなる。
 速いバイクには上手い人が乗ってこそその性能を発揮する。これまで外車など少なかったころには、そのパワー差を隠れ蓑に走っていた自分のペースでもなんとかなってきた。しかし国産のオフ車が減ってきた今、外車や大型車が増えた。自分のウデはその手のバイクに乗るライダーとしては著しく劣っているだろう。
 寝不足もたたって抑えの効かなくなってきた終盤は、後ろから来たバイクを先に行かせることに苦慮する。



 ゴールへたどり着いたのは10番手ぐらいだったらしい。決してスピードが速かったからではなく、休憩が少なかったりしたのが要因だ、と思う。今回、3台しか抜いていないはずで、その何倍も抜かれているはずだから。それでも後半スタートの恩恵でそうした抜いた・抜かれたが少なかったのが良かった。

 閉会式では、第9回の時に感じられた「気負い」が無くなっている印象を受けた。

 それはゴール後少し話をさせてもらった時に「今後こういった形でボチボチやりますよ」との言葉からもとれる。
 昨年の開催に障害となった問題点が何であるのかはわからない。しかし今年はそうした影響は何も感じられなかった。
 あまり大きく構えずに、これからも続けていって欲しい。第10回は区切りの数字で有るかも知れないが、それが最後の数字にはならないだろう。そう思った。

 来年はどういった形で参加できるだろうか・・・

文・写真 : 河村 格、入江泰弘

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