第26回 番外編・国道352号線

 関越方面から東北へ抜けるルートは限られています。海沿いは太平洋側、日本海側とも抜けることが出来ますが、中央に近くなるとルートが無くなります。沼田から金精峠を越える日本ロマンチック街道のほかは、小出から奥只見を越えるルートがわずかに有るのみです。

 その2ルートのうち、新潟県側の小出ルートは、バイクによる通行が出来なくなっています。バイクでは危険という見解が示されているようです。
 しかし、そのルートは、国道です。有料道路にはバイクの通行できない国道扱いの道が他にもありますが、ここは有料道路ではありません。
 では、そのルートをたどってみることでその真意を測ってみましょうか。

 こういう道ですので、もちろんバイクでたどるわけには行きません。今回は車を利用しての訪問になります。



 国道352号線は本来海沿いの新潟県柏崎市から始まる。しかし、長岡市の手前で峠区間がまだ開通していないので、全線通しての通行は今のところ出来ない。今回は特殊なケースでもあるので、問題のバイク通行止め区間を重点的に走ることにする。
 新潟県小出市から湯之谷、大湯方面を目指す区間はバイクでも通行できる普通の区間だ。この道は檜枝岐方面へ向かうのだが、標識は県道への迂回を指示している。



 この県道は、「奥只見シルバーライン」である。
 しかしながらこの道もバイクの通行は禁止されている。



 シルバーラインはもともと有料道路だったようで、今もゲートは残されている。奥只見湖までのルートで、途中で国道へ接続している。
 このルートを推奨しているのは、そこまでの国道区間が難所であることを示している。



 シルバーラインの特徴は、そのルートの大半がトンネルの中であることだ。
 雪の深いこの界隈、スキー場でさえ厳冬期は閉鎖され、4月から営業を再開する春スキーのメッカとなっているほどで、雪による影響を極力少なくするべくトンネルによるルート開発を行ったものだ。山をくりぬく区間以外の、本来解放されるべき部分もコンクリートのトンネルで覆われている徹底ぶりだ。

 実際問題として、これほどのトンネルの中をバイクで走ることが危険であるという見解には概ね賛成できる。よってここが通行止めであることに特に意義は唱えない。



 長いトンネルの途中で、檜枝岐方面への分岐が現れる。ここで国道に接続するのだ。



 一旦戻って、大湯から枝折峠を越える本来の国道を進む。道は次第に山越え国道の趣を増してくる。
 駒ノ湯温泉までは一般的な国道であった。



 そしてここからが、問題の区間である。

 バイクの通行が禁止されてしまう区間はここから福島県に入るまで。このルートのハイライト区間である枝折峠、奥只見湖畔の区間が通れないのだ。
 そればかりか、午後の時間帯は小出側から北上すること自体が禁止されてしまう。同様に午前中は福島県から小出方面への通行が禁止される。道路の狭さで行き違いが確保できないからだ。

 これは車にとっては好都合、とそれなりのペースで走っていくが、実際には規制を無視した車が対向車として急に現れるのでそれ相応の危険も伴う。



 そうして擦り込まれた「狭い」という意識からすると、全線に渡って通行の支障は感じられないほどの道に見える。
 バイクに乗る者から見れば、この程度の道はいくらでも走っている。中部山岳地区ならば当たり前のようにこうした狭い峠越えがあるからだ。



 そして峠に到着した。
 ここまでは本数こそ少ないがバスも走っているようだ。



 あいにくの天気で展望は今ひとつだったが、この峠はなかなかに気持ちの良い峠だ。制覇感がある。

 バイクでないことは残念だった・・・だろうか?

 なぜか、バイクがいないことが快適に思えてしまったのも事実だった。
 バイクに乗る人間として、いつもはバイクで峠道や林道を走っている。バイクで走っているときに、遅い車が鬱陶しく感じることが多い。車から見て、逆の場合もある。
 この狭い道が、バイクにとって危険かと聞かれれば、とくにそうは思わない、と答えるだろう。だが、ここをバイクで埋め尽くされるのは結構イヤな気がした。
 普段は林道などバイクでしか行けないところへ行くことが多い。車でしか行けないところが有ってもいい。

 ・・・遅い車が鬱陶しいのはバイクの立場だけではないし。



 さて。ここから奥只見湖を越えて国道は東北を目指す。



 スノーシェッドの坂道をくだり、九十九折りのコーナーを駆けおりる。



 枝折峠を下りきれば銀山平。真新しい温泉が出来ていた。10時の開館を待って入浴。
 キャンプ場にあるため、朝に入るのが清潔で良い。真夏ながらひんやり冷たい空気が露天風呂に心地よい。



 銀山平で先ほどのシルバーラインと接続。ここまでシルバーラインでは20分とかからない。しかし国道では1時間以上かかる(休憩時間を除く)のだ。車は少なかったので、それなりのペース(インプレッサでの「それなり」ですから、推して知るべし)で走ったにもかかわらず、だ。
 このルートを日常的に使用する向きがあるのかどうかは判らないが、まず通常は国道を走ろうとは思わないだろう。トンネル続きのシルバーラインは物珍しくこそ有れちっとも楽しくないが、普通に車がすれ違えるのは日常のルートとしては楽だし、なにより3倍以上の時間差は大きい。



 奥只見湖はダムによる人工の湖だ。人造湖としてはかなり大きく、山襞にそって複雑な形状を見せるため、湖畔を走る国道もやはり狭いワインディングが続くことになる。
 そしてここもまだ、バイクの通行は禁止されている区間だ・・・が、



 通行禁止を無視するライダーもやはりいる。装備から見て、知らずに入ったとは考えにくい、明らかに確信犯だ。

 まあ、わからんでもないが・・・

 頼むから事故だけは起こさないで欲しい。場合によっては解除されるかも知れぬ通行禁止、しかし通行禁止の今バイクが事故を起こしたりしたら、そんな可能性は無くなる。通行禁止である以上は、バイクの事故は増えることはない。
 バイクに乗る人間の一人としては、ここを走ることは決して勧めない。「個人の責任」などではなくなる可能性を秘めているからだ。林道のゲート破りなどと同様、認められることとは思わない。



 大型車は通れない。これは物理的に通れないのだから仕方ない。
 バイクは、通行に障害はない。しかし通れない。バイクに対するイメージの所為だろう。



 実は通行禁止は新潟県内のみである。福島県に入った途端、バイクも大型も通行可能になる。
 道が急に広くなるわけではない(多少は広くなっているようだ)。行政の考え方一つだ。「国道」ではあっても、県によって違った行政にある。道路の整備状況が県境で大きく変わるのもそれに基づく。



 檜枝岐からは尾瀬沼へ登山のルートとなる。東北にありながらなぜか関東の香りがしてしまう。



 檜枝岐は鄙びた温泉街だ。



 2つの外湯があるが、ここは新しく清潔。眼下に川の流れを望む露天風呂が気持ちよく、このままいつまでも滞在したい気分になる。出来れば夏休みのシーズンは避けた方が良いのだろう。こういう静かな温泉は、子供連れのいない時に入りたい。この日はほぼ貸し切り状態にあったので素晴らしく快適であった。
 近くに大きなスキー場もあるので冬に来るのも良いだろう。どっちみちバイクで来るには不便な土地なのだから、雪で困るなどということは無い。しかし、夏でも涼しい避暑地の温泉は、夏に入った方がより快適だ。



 檜枝岐の蕎麦は「裁ち蕎麦」と呼ばれ、つなぎを一切使っていない。昔はこの界隈ではつなぎの材料を入手できる環境になかったことがそのような蕎麦の産地となった。その性格上、暖かいかけそばには向かない。かけそばも冷たい汁になる。ここは無造作に盛られた盛りそばを山の産物の天ぷらでいただくのがよろしいかと。

 檜枝岐からは田島方面へ国道は続く。しかし走り通すことに意味はないので、紹介はここまで。

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