南紀の山

〜消えゆく林道王国〜

 全国的に林道が少なくなりつつある。

 関西でもかつて隆盛を誇った葛城山系あたりはすでに壊滅的になっており、中部でもほとんどの林道が舗装道路に変わっている。
 そんな中、林道王国と歌われる南紀の山々でもやはり、舗装化の波は防ぎきれないようだ。

 南紀の林道群は、奈良・和歌山県境の護摩壇山を中心にその多くが集まる。



 中部・関西からのアプローチは、国道24号線橋本から高野山へ上がる。
 地道を走る人が多いと思われるが、大型車であれば高野龍神スカイラインを勧める。時間的に速い、というのもあるが、快適に走れる舗装道路も悪くはないものだ。バイクで830円はやや高いと思われるが、護摩壇まで距離が20km以上もある。
 なお、距離の長い林道ばかり、さらにその林道が四方八方に枝を伸ばしている形状であることから、ガソリンの補給は確実に行いたい。観光地であるために高野山道路の途中にある給油所は休日でも空いているので、必ず満タンにしておくことが必要だ。



 護摩壇山のシンボル、スカイタワーのあたりに多くの林道が集まる。
 スカイタワーの売店には飲み物などの販売もあり、ベースとして重宝する。



 スカイタワーのすぐ脇に、猪笹林道への入り口がある。
 しかしここは一般車通行禁止になっている。特にゲート等無いように見えるが、距離が長いだけに何かあったときに問題は大きくなるので入らないように心がけたい。



 まずは稜線から西、和歌山県側の林道から入る。
 「南谷城ケ森林道」として知られてきたこの林道は、「広域期間林道白馬線」として生まれ変わろうとしている。舗装化して何が広域期間林道・・・潔くスカイラインとでも名のったらどうだ。この地区でも盟主的な存在であったはずだが、すでに舗装はかなりの範囲に及んでいるようだ。
 しかも数日後からは時間通行止めによる工事が始まることが表されている。2月まで、ということは実質来春までは走行できず、その際には違った姿を見せることになるわけだろう。



 やっとダートにたどり着く。倒れた「白馬線」の林道標識が痛々しい。
 件の工事が舗装工事であることを如実に示すのが路面に打たれた釘の数々。青いビニール紐が結びつけられ、工事のポイントを示しているようだ。



 表示の消えかかった「南谷城ケ森」の林道標識がダート区間に立つ。ここだけはまだ昔の姿を辛うじて残している。



 あまり荒れた道という意識がなかったが、時は梅雨のまっただ中、小さな崖崩れや落石は頻繁にあるようだ。
 舗装化しても山肌には手を入れない例が林道には多い。もとが未舗装であれば多少の石ころは問題にはならなくても、舗装された路面であればわずかな崩落でも通行の支障になってしまう。
 ダートを走るために作られたバイクならそれほど問題もない路面だが、雨の後であるためか全体的に荒れている。



 かつてを忍ばせる余裕もなく、旧八斗蒔線との分岐へ。ここまでで南谷城ケ森のダートも終わっている。スパッと切れた舗装が今後の林道の運命を物語っている。




 清水町へ出てしまうと大回りなので、龍神スカイラインに戻って小森谷林道へ。



 前半は楽な路面で護摩壇スカイタワーを遠くに見ながら走る。
 しかしここもまた途中から急に荒れ始める。

 ほとんど川・・・

 このルートには小さな滝が数多く存在する。それだけに水の湧出量はかなり多いようだ。
 梅雨空の当日の林道は、後半のほとんどが川になっていた。轍もいくらか出来ており、水の深さもそこそこある。まさかこんなところで川下りするとは思っていなかった。



 なんとか行き止まりまで到達。
 実はこの林道はまだまだ先がある。しかし、ここから吊り橋を渡らないと先へは進めないのだ。バイクや車でさえも渡れる吊り橋は時折見掛けるが、この吊り橋は無理だ。歩いてすこし渡ってみたが、とてもバイクなどで通れる代物ではない。危険ですから絶対にやめましょう。



 しかたないので戻る。ここまで来るのは全て下りだったのだが、当たり前ながら戻るには全て登る必要があるわけだ。崖崩れの箇所も下りはなんとかそろそろと通り過ぎた。登りはどうするんだ・・・
 F650というバイクは私の体格からすれば小さいバイクで足つきは非常によい。安定感も高いので、意外とこういう場面には強かった。下りだと底付きしそうなサスペンションも登りでは十分で、思ったより楽に登れた。悪路は登りに限る、か。



 稜線を境に東側は奈良県となる。通行止めの猪笹林道、そこからつながる川津今西林道などは南紀最長のダートとされている。
 奥千丈もこの地域では名高いロングダートだった。十津川温泉へ抜けていることもあり、人気の高いルートだ。それだけに一般車両(ファミリーカーとも言う)の比率が非常に高く、それがこの林道の舗装化を進める鍵となった。



 以前から整備の良いこの路線、今回の林道の中では唯一大型車でも安心して通れる林道であるが、その路面はファミリーカーレベルでも難なくこなせる堅く締まったダートである。



 別の林道への分岐点を過ぎてすぐに真新しい舗装路面が現れる。すでにこの先のダートはほとんど無くなっている様だ。2〜3カ所点々と残っているだけのようである。長い路線だけにそこまで行ってしまうと帰ってくるのが億劫だ。十津川へ抜けてしまえばさらに別の林道もあるのだが、とても短時間で回れるところではなくなる。



 さきほどの分岐へ戻り、イタツゴ奥千丈線へ。
 こちらはほとんど整備がされて居らず、山側は崩落石が溜まり放題、路面はとにかく轍が続く。比較的新しい林道と思われる。



 ここから野迫川へ出て温泉を経由すれば、さらに川原樋川林道など魅力的な林道へも行ける。
 少なくなったとは言え、やはりまだまだ簡単には走り尽くせないほどの林道が存在する南紀の山。完全になくなる前に、制覇しておきたいものだ。

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