南アルプスに抱かれて
日本に「アルプス」となのつく連山が3つある。
北アルプス、中央アルプス、南アルプス。
いずれも3000m級の山々が連なる日本の屋根だ。
北アルプスや中央アルプスに比べ、秘境の度合いが強いのが南アルプスだ。
交通もそれらに比べると不便で、また立ち入りも簡単ではない。
しかしながら、南アルプスには今も多くの林道がダートのまま残っており、オフローダーに取っては避けて通れないところである。
比較的自分にとって馴染みの土地であり、林道も何度か走っている地域だ。大井川鉄道などもがある関係でバイク以外でも何度も訪れており・・・鉄道そのものはトロッコ区間ばかりで蒸機の走る区間は乗ったことが無いが・・・時間的にも読みやすい。帰りは5時頃までに片が付けばOKだろう。
川根温泉手前で村の市なる集合店舗に寄り、居酒屋然とした料理店に入る。山の中だが静岡県、刺身定食を昼飯に。「真希」という店の名は奥様のお名前か。
すぐ隣にある川根温泉には帰りに寄ることにし、まずは林道を済ませておこう。
南赤石林道への入り口は川根大仏とウッドハウスおろくぼの看板が目印だ。
ガソリンは心配の要らないこのバイク、ただし距離は長い林道が多いので不安な車両は入れておこう。
しばらくは舗装が続くが、ウッドハウスおろくぼから先はダートになる。
このダートが極め付きの超高速ダートで、大型車にとっては天国のような道だ。しかし、交通量が多く普通車、特に年配のドライバー(女性多し)が目立つ。
藤川林道との分岐を直進し、自然公園内に入る。このあたりの林道はまだ通行制限のされる域には入っていない。
つい先日、崩落があったばかりの箇所は既にきれいに整地されていた。その理由はあとでわかることになる。
この地盤は強いとは思いにくい。いつまた崩落するかはわからない。それが自然の恐ろしさである。
大札山にはトイレなどもある登山のひとつのベース。
それにしても車が多い。林道ならず普通の山道でもよもやというほどに車が行き交う。中にはバスによる団体様まで。
こうして普通の装備の車が多く行き交う道ながら、その姿は断崖絶壁である。写真を撮る間も車がひっきりなしに通る。
行けるところまで行こう、と走らせていると、手を挙げるおじさんがひとり。何事かと思い停車する。
「降りる道を間違えて遠くまで来てしまった。車のあるところまで乗せていってもらえない?」
・・・なんだ、ヒッチハイクかよ・・・
実際問題、タンデムの経験はほとんどなかった。しかもここは林道、そしておじさんはもちろんノーヘルであり、間違っても振り落とすわけにはいかない。慎重に走るがそんな時に限って大型車が多く通る。
せっかくだから、少し話などしながら走る。
「なんかすごい人出やね」
「愛子さまの花、シロヤシオが見頃だからね」
・・・なるほど。それで年配の女性が多いわけだ・・・
山犬段の山小屋。新しくきれいで仮眠にはよかろう。
山屋でない自分には、ここで夜を雑魚寝で過ごす気は起こらないが・・・
登山というよりハイキング程度で歩ける山のようだ。
そしてこの地図を見る限り多くの通行禁止林道がある。今走ってきた林道もこの先で通行止めになるようだが、そこまで行ってみよう。
斜面までしっかりと閉ざされたゲートの向こうにはハイキングの人たちが。
これほど閉じてしまえばさすがのバイクでも入ることは出来ない。
おなじみの林道標識に、ここの林道名はかかれていない。ただ「林道」とあるだけだ。
なんと、鍵を壊して進入する輩がいるようだ。
ゲートの閉ざされ具合を見ると、バイクがそのターゲットであることは明らかだ。ただバイクの場合、歩行ルートからでも入れるのでわざわざ鍵を壊してまで進入することはあるまい。鍵を壊したのは車での進入だろうと思われる。
それが車であろうとバイクであろうと、ここまでの通行可能な区間とは安全性などもかなり違うと思われる。善悪を棚に上げても入ることは危険な行為で、こんな山奥で転落事故など起こせば個人の被害だけではすまなくなる。
これだけの人が行き交う観光ルートだ。ここが一般車通行止めの専用バス道になることも考えられる。南アルプスは北/中央アルプスに比べて閉ざされた山であるという感が強い。登山的にはそうではないのかもしれないが、林道派としてはその残された林道の数に対して閉ざされたところを多く感じる。
そろそろ温泉が気になりだしたのでそろそろ林道走行は終わりとし、川根温泉へ向かう。
SLの見える露天風呂で人気の温泉、しばしまったりとしたあとは、鰻でも買って帰ろうか・・・
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