無料化されたパールロード

 有料道路の多くは、建設費の償還期間が30年とされている。
 そして、その30年が過ぎると料金徴収を止め、無料の道路になる。ならなかった例もあるが・・・

 伊勢志摩の海岸線に観光道路として君臨してきた「パールロード」は、昭和48年(1973年)の開通以来30年を迎えた。この道路は観光道路でありながら、地元住民の生活ルートとしても使われている。それは、深夜から早朝にかけての夜間は料金徴収を行わないまま通行できる様になっていたことからも伺える。
 無料の道路にならなかった例というのは言うまでもなく乗鞍スカイラインを指す。乗鞍は観光以外の目的はなく、生活ルートとしての役割は無い。パールロードはそうではない。



 鳥羽は観光の町、と言われる。市でありながら住民数は3万に満たない。普通に生産活動だけをしていたのでは市としての収支が成り立たない。JR参宮線の終着駅であり、また近鉄の重要ターミナルとなるなる鳥羽駅は、こうした観光の拠点でもある。
 パールロードへはここ鳥羽駅からバスも出ている。それは観光ルートとしてだけではなく住民の足としての役割も果たしているのだ。



 国道167号線から分かれてパールロードへ向かおう。



 沿線のトヤ海岸は海水浴客も訪れる。
 内陸からのルートは旧来貴重な通り抜けダートだったのだが、すでに舗装化されて久しい。



 「ろーどるーぱ」である。

 なぜ「どーろるーぱ」でないのかは知らんが。



 その昔、初めてバイクに乗った頃。このコーナーで事故ったことがあったなあと。
 今にしてみれば何のこともない簡単なカーブなのだが・・・



 ことさらに海を意識した看板が並ぶ。
 志摩は海女の里であり、また浦村牡蠣は無菌牡蠣として全国に知れ渡る。



 パールロードの象徴、がこの大橋。
 沿線の細道を伝えばパールロードを使わずになんとか通り抜けられる海岸線だが、この橋だけは簡単にはいかない。少なくとも車では通り抜けられない海峡の町だ。



 時は3月30日。

 無料化を明後日に控えた今浦料金所にはしかし、最後を慈しむような客層はなかった様に思える。
 そう、この道路は無料になるだけで走れなくなるわけではない。

 来週末には無料でここを走り抜けることが出来るのだ。何を物好きに金を払って通らねばならんのか?というのが一般的な見方であろう。

 余談ながら、ここには以前、歌手の鳥羽一郎のお父さんが勤務していたことで名高い。



 春の陽気は霞となって海を柔らかに包む。
 リアス式海岸を望む高台から水平線を見れば緩やかにカーブ描いているようにも見える。本来曲がっているものだ、という知識が見せるマジックなのか。



 箱田山の鳥羽展望台にはドライブインもあるが、ここにはオフロード天国・・・4WD系のところだが・・・の入り口もある。看板は既に破れ、近頃はそうした車両も見掛けなくなった。今も営業しているのかは知らない。



 歌手の鳥羽一郎・山川豊兄弟はこの地区から出ている。
 「兄弟酒」の歌碑が展望台に建つ。こうした歌碑をバックに記念写真を撮る姿も多く見られる。「観光」の地としては果たして有りや無しや・・・



 やっぱりあった、鳥羽一グッズ。貧相な看板が寂しさを誘う。



 さて、ここからパールロードの極上区間の始まりだ。

 コーナーを駆け抜けると海に飛び込んでいくような快感を覚えるこの区間を走ることは、学生時代の帰省期間中の日課でもあった。原付のパワーではほとんど道をトレースしているだけなのだが、それでも楽しかった頃がやはりある。



 今はこうして交通量も少なく、そこそこのスピードを確保できている。
 取り立ててキツイコーナーもないので、それなりにスピードが出ていないと面白くは無いものだ。



 途中に相差の出入り口がある。全線通行券にスタンプをもらうことで途中下車出来るようになっている。
 ちなみにこの全線通行券、本来はもらうことが出来ないらしい。出口で回収されてしまう。かなり無理を言って、的矢区間の料金を2度払いすることで確保してきた。
 これはしかし、どうにも納得いかない部分ではある。俺は余分に金を払う、と言っているのになんでいろいろ文句言われなきゃならんのだ。バイクだからか?これが高級乗用車だったらどうだ?

 これには複線もあって、料金を着服したという噂もいくらか新聞ネタにもなったことがあり、券の回収に厳しくなったようだ。



 相差で途中下車して海辺に出てみる。



 「相差」(おうさつ)も難読だが、「畔蛸」もなかなかの難読だ。なんと読むでしょう?
 答えは反対側の壁にかかれていた。ほとんど落書き同然だが・・・



 パールロードに戻る。
 第一区間の終点付近に、あのパルケエスパーニャこと志摩スペイン村がある。

 近鉄の資本が入っているため、ここへの足は近鉄と傘下の三重交通バスによって確保されている。そのルートは磯部駅からのもので、鳥羽は通過される町となってしまった。
 これからパールロードが無料化され、観光のひとつのネタが弱くなるのではないか、それが観光を売りにするしかない鳥羽市民の心配の一つでもある。



 的矢からの区間は奥志摩ラインと呼ばれ、別料金区間である。
 どうやら、無料になるのはシーサイドラインのみで、奥志摩区間はまだ30年の償還期間を経ていない様だ。



 さて、有料の最後の週末をバイクで走行した。
 無料化された最初の週末である翌週の様子はどうなのだろうか?



 相差料金所には「無料開放」の文字と、塗りつぶされた料金表が残っていた。いずれこのゲートも取り壊されることだろう。人影が無くなりひっそりとしてしまったゲートを通りすぎる車が何台かあった。



 この日、夏用タイヤに履き替えた車のならし運転のためにこの道に来たわけだ。
 こういう道だけに、高出力な車になるほど走りやすい道・・・すなわちアベレージ速度は結構高め・・・であり、交通量もたいしたことはなかったのでならしにはもってこいの道だったのだが。

 ごらんの通りである。
 このときの速度、35km/h・・・

 無料化が車を呼んだか、車両数は飛躍的に増えた。走り慣れていない車やいささか古いファミリーカーがあふれかえった。残念ながら、しばらくここには近づかない方が良いようだ。
 それは車だけではない。バイクでも同じだ。いや、ゆっくり曲がるのが簡単とは言えないバイクの場合はどうしても抜きたくなる。白線が続くが決して安全に抜ける道ではない。

 しばらく、今の無料化フィーバーが止むまでは訪れるのを控えようか。



 大丈夫、急がなくてもパールロードは閉鎖されたわけではない。いつでも通れる道なのだから・・・

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