昨年末から年明けにかけて今年は良く雪が降る。

全体の傾向は気温からして『暖冬』なのは確かだが、

それにしても雪は良く降る凄く降る。

でも、降ることを嘆いていてはいけない。

降ったその日、あるいは最中、あるいは翌日以降から

『雪中ツーリング』には絶好の環境に変わる。

湿度の低い今の季節が、走る分には最適。

この辺りはスキーをするのと一緒の考えだろうか。

そしてある晴れた日、私は碓氷峠へと足を向ける。

県境付近で『小さな雪中ツーリング』の始まりだ。


国道18号の碓氷バイパスから脇にそれ、

同じバイパスの隣を走る赤坂林道に向かう。

かつてバイパスが有料だった頃は、

隣にバイパスを見られるこの道をよく走っていた。

峠を林道で越える、という点でも、気に入っている道だ。

小さな集落を過ぎると、目前には真っ白な道。

誰も跡をつけていない雪の上を駆け上がる。

スノータイヤを履かせた車体はすんなりと進む。

普段では静かな4サイクルの排気音も、

今日は幾分賑やかに聞こえる。


若干傾斜が厳しくなると、登るには苦労する。

舗装された上の積雪は、思いの他滑りやすい。

時折林道とバイパスが並ぶ場所に出会う。

隣は除雪が行き届く主要な道。

かたや此方は何もされない林道。

何とも奇妙な光景が広がっているが、

互いに気にもせず、ひたすら前へと進む。


雪の林道は様々な特徴を持つ。

日の当たる場所は自然の力で圧雪されたり

解け出したりで降雪量より若干少なめに、

逆に日陰はなかなか解けず潰れずで残る。

背の高い植物の有るところは吹き溜まり、

大きな障害物に成ってしまう。

見た目では進めそうかと思って

勢いつけて走ったらどんどんハマって立ち往生。

そんな場所だからこそ、小さいバイクが楽しい。

2輪2足を肌身で実感できることは請け合いだ。


普通なら1時間もかからない林道を、

約2時間掛かって走りきる。

冬の軽井沢の気温は昼とは言え氷点下。

だがしかし体もバイクも共に暑い状態。

そんな状態で軽井沢駅前をさっさと通過し、

今度は旧18号で起点に戻る。

まだまだ先は長いのだ。


旧碓氷峠こと旧国道18号は狭い舗装路。

除雪も結構半端な状態で、

ある意味普通の積雪後の状況はこんな感じ。

何度と無く降った雪が凍り、

そしてまた雪が降る、その上に積もっていく。

だから路面が凸凹でかつ凍結。

先ほどの林道とは違って慎重さが必要になる。


旧道をゆっくりとしたペースで下っていく。

遠くに市街地の風景が見えてくる。

そう遠くは無いはずだけど、

いつもより増して遥か遠くのような錯覚を覚える。

しばらく下っていくと、3連の眼鏡橋が見えてくる。

明治時代に利用された煉瓦造りの鉄道橋の跡。

今ではこの奥に有る電化された路線も廃線となり、

トンネルに潜った新幹線が山の中を貫いている。

時代と共に変わるのは鉄道もバイクも、一緒。


再び麓の集落まで戻る。

そろそろ夕暮れも近いが、ちょっと寄り道。

眼鏡橋をモチーフにした施設でもある

町営の温泉「峠の湯」でひと風呂。

開設間も無いこともあって小奇麗。

全体を見渡すと、何だか鉄道色の強い建物。

隣接する施設には最近まで活躍した

電磁ブレーキのEFが置いてあったり、とか。

地域住民がこれに支えられて来た事が良くわかる。


温泉を出る頃には、もう日が暮れる頃。

今日の出発点、横川駅に再び戻る。

出発した日中は、小春日和の暖かさだったのに

それがまるで嘘のように冷え込む。

でも、体は温泉の余韻で暖かい。

帰路の途中は、日暮れと共に来る寒風が

すうっとウェアの隙間を通りぬけて、

火照り気味の体をちょっと冷ます。

たまの休みを心身ともに楽しんだ1日だった。

文・写真 : 山本賢史

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